運命のボタン
THE BOX
★★★☆ 微妙に面白い♪
★
究極の選択を迫られる夫婦アーサーとノーマのお話だ。
ある日、夫婦の元へ謎の箱が届けられる。
箱の中身はボタンの付いた装置。
好奇心にかられたダンナが分解してみると、装置の中はからっぽ。
どう見てもイタズラとしか思えない。
うっちゃっておこうとするのだが…
そこへ箱の送り手らしき謎の男がやって来て、
24時間以内にそのボタンを押せば、100万ドルが手に入るが、
世界のどこかで、あなたがたの知らない誰かが一人死ぬことになる。
ボタンを押さなければ、その箱は次の夫婦の元へ運ばれる。
あなたがたはボタンを押しますか?
という究極の選択を迫ってくる。
『ドニー・ダーコ』という作品で注目されたリチャード・ケリー監督。
実に何とも独特のスタイルを持っている人だ。
どういうスタイルかと言うと… 『わかりづらい』のだった。
そしてこの映画はさらに進化して…『わからない』のだった♪
原作がリチャード・マシスンだから、
SFホラー … かな?と当りをつけよう♪
ちなみに、原作とは似ても似つかぬ作品になっている。
日本語版は,約17ページの短編だ。
ゾッとするオチがついた好短編だと思うが、
よくもまあ、この短編をここまで膨らませたものだと感心する。
こういう映画の料理法(鑑賞法)は、実は簡単なのだ。
監督に聞いても答えてはくれないだろう。
答えそのものが意味不明ということもあり得る。
ではどうするかというと… 好き勝手に解釈する! これに尽きる♪
私だって忙しいのだ。忙しい合間を縫って映画を観ている。
観るだけではなく、一銭のお金にもならないレビューまで書いている。
わからない映画を理解できるまで繰り返し観るほどヒマではない!
だから、好き勝手に解釈すればいいのである♪
『俺の映画をちゃんと理解しろ!』と監督が言ったら、
『理解してほしければ、もっとわかりやすく撮れ!』と言い返せばいい。
わからない映画は解釈自由である。それでいいのだ♪
★★
では、私がどう解釈したかというと…
人類が『何か』によって試されている
という映画だと思う。
手塚マンガ『W3/ワンダースリー』の銀河連盟かもしれない。
その『何か』は、火星と関係しているように思える。
その『何か』は、光の世界(来世)を暗示しているようでもある。
そしてその『何か』は、アーサー・C・クラークの有名な言葉が表す
『魔術と見分けがつかないほど高度に発達した科学』を誇示している。
さらにその『何か』は、我々とは異なる時間感覚とユーモアを持つが、
我々人類が滅びることは望んでいないようだ。
宇宙の一員として、正しい方向(光に包まれる)へ導こうとしている。
絶望が支配することのない場所へ導くための
壮大な『試み』を繰り返しながら、我々を救済しようとしているらしい。
この『繰り返しながら…』というところがポイントだ♪
つまり、今回が始めてではないらしい。
この『試み』には、子ども一人がいる幸福な夫婦が選ばれる。
箱のボタンを押さなければ何も起らない。
ボタンを押せば、
100万ドルと引き換えに知らない誰かが地球上から消える。
自分の利益のために他人を不幸にしたという負い目は、
究極の試練として装置がリセットされるまで続く。
100万ドルと引き換えに一人の人間の命が失われようとも、
その『何か』は気にも留めない。
我々にとっての悲劇は、彼の地では別の基準で計られるらしい。
救われる道はひとつ。良心の声に従うことだけ。
だから、押してはいけない! どんなことがあろうとも。
他人の命と引き換えにお金を得てはいけない!
しかし、押した後にも救いがあると、この作品は言っている。
究極の選択をすれば、救われる道があるのだと。
そしてその選択こそが、我々の誤った過去を償う唯一の道らしいのだ。
我々はすでにたくさんの『ボタン』を押してしまったのだろう。
押してしまった過去は変えられないが、未来は変えられる。
自己犠牲という『究極の痛み』によって。
リチャード・ケリー監督が、この題材を選んだのは、
人類の未来に絶望したからなのだろうか?
★★★
人類の未来が形のない『彼ら』に試されている。
我々の未来は、我々一人一人の日々の小さな選択によって形作られる。
その選択の基準は『利他主義』というものらしい。
他人を犠牲にしてまで、己の欲望を満たしてはいけない。
それは地球の、さらには宇宙のバランスを崩すことになるからだ。
『彼ら』は、常に謙虚であれ!と言っている。
この作品の『わからなさ』は、
『彼ら』の思考を我々が理解出来ないということ。
『彼ら』が我々の想像をはるかに超えた存在だとしたら…
我々には『彼ら』を理解することなど出来ない。
『彼ら』の行動を不条理なものと感じるのは、そこに原因がある。
『彼ら』は『理解を超えた彼らの方法』で、我々を救済しようとしている。
『彼らの方法』と『我々の方法』の違いが、どれほどのものなのか。
その描写のなさが、
この作品を『わからない』ものにしている。
我々が誰かを試そうとする時、究極の選択を迫ることはまずない。
それは、我々の倫理観が許さないだろうから。
しかし試しているのは『我々』ではなく、
理解を超えた『彼ら』なのである。
我々にとっての『右』が彼らの『左』で、
我々の常識が『上』を示す時、彼らのそれは『下』を示すとすれば…
なぜ『誰かの命』と『現金』の二択なのか、
我々は決して理解出来ないだろう。
それはまさに、ビートルズの名曲『ハロー グッバイ』と重なる。
♪You say yes, I say no
You say stop, and I say go go go ~
Oh no ~♪
You say goodbye and I say hello
hello, hello ~♪
I don't know why you say goodbye
I say hello, hello, hello ~♪
I don't know why you say goodbye
I say hello…
この後、ポールは…
♪I say push, you say no!
You say stop and I say push, push, push the button ~
Oh no ~♪
… と書いたところで、ジョンに止められた。
ジョン曰く、『それは宇宙の摂理に反する!』と。
(またいいかげんなこと書いてる! こういうボケが必要かなぁ…?)
ともかく、ビートルズは知っていた。
You が『彼ら』で、I が『我々』であることを。
ビートルズの歌は、我々がボタンを押さないための安全弁なのだ。
だから押してはいけない! どんなことがあろうとも。
そう解釈するとわかりやすい。わかりやすいが矛盾も出てくる。
そういう部分はうっちゃっておく。めんどくさいから♪
(めんどくさいのは、アンタのレビューや!)
★★★★
冒頭からラストまで、観客をグイグイと引き込む監督の演出力。
名優フランク・ランジェラの圧倒的な存在感。
キャメロン・ディアスのリアルな演技を堪能するだけでも十分楽しめる♪
日常生活で、いちいち究極の選択をしていたら疲れてしまう。
しかし、『押さなければ人類が救われる』のであれば、
この二択を日常生活に応用することを考えよう!
たとえば…
ここにボタンがあります。
(ちがう! そのボタンじゃない!)
ここにボタンがあります。
24時間以内にこのボタンを押すと、
あなたのブログへのアクセスが一気に100万増えます。
しかし、あなたの知らない はてなブログのユーザーが一人
このサイトから削除されてしまいます。
それでもボタンを押しますか?
はい♪
はい♪ じゃなくて!
もう一度お聞きします。
よ~く考えてから答えて下さいね!
あなたの知らない はてなブログのユーザーが一人
このサイトから削除されるんですよ!
本当にボタンを押しますか?
は~い♪
(あっ、押すんや。 アンタやで、人類滅ぼすの!)
★ネット上の『運命のボタン』とボタンの画像を流用・加工させて戴きしました 感謝!★
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