岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

『運命のボタン』という映画♪

運命のボタン
THE BOX

2009年アメリカ/リチャード・ケリー監督作品

★★★☆ 微妙に面白い

 

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究極の選択を迫られる夫婦アーサーとノーマのお話だ。

ある日、夫婦の元へ謎の箱が届けられる。

箱の中身はボタンの付いた装置。

好奇心にかられたダンナが分解してみると、装置の中はからっぽ。

どう見てもイタズラとしか思えない。

うっちゃっておこうとするのだが…

 

そこへ箱の送り手らしき謎の男がやって来て、

24時間以内にそのボタンを押せば、100万ドルが手に入るが、

世界のどこかで、あなたがたの知らない誰かが一人死ぬことになる。

ボタンを押さなければ、その箱は次の夫婦の元へ運ばれる。

あなたがたはボタンを押しますか?

という究極の選択を迫ってくる。

 

ドニー・ダーコ』という作品で注目されたリチャード・ケリー監督。

実に何とも独特のスタイルを持っている人だ。

どういうスタイルかと言うと… 『わかりづらい』のだった。

そしてこの映画はさらに進化して…『わからない』のだった♪

 

原作がリチャード・マシスンだから、

SFホラー … かな?と当りをつけよう♪

ちなみに、原作とは似ても似つかぬ作品になっている。

日本語版は,約17ページの短編だ。

ゾッとするオチがついた好短編だと思うが、

よくもまあ、この短編をここまで膨らませたものだと感心する。

 

こういう映画の料理法(鑑賞法)は、実は簡単なのだ。

監督に聞いても答えてはくれないだろう。

答えそのものが意味不明ということもあり得る。

ではどうするかというと… 好き勝手に解釈する! これに尽きる♪

 

私だって忙しいのだ。忙しい合間を縫って映画を観ている。

観るだけではなく、一銭のお金にもならないレビューまで書いている。

わからない映画を理解できるまで繰り返し観るほどヒマではない!

だから、好き勝手に解釈すればいいのである♪

 

『俺の映画をちゃんと理解しろ!』と監督が言ったら、

『理解してほしければ、もっとわかりやすく撮れ!』と言い返せばいい。

わからない映画は解釈自由である。それでいいのだ♪

 

では、私がどう解釈したかというと…

人類が『何か』によって試されている
という映画だと思う。

それは『2001年宇宙の旅』のモノリスかもしれない。

手塚マンガ『W3/ワンダースリー』の銀河連盟かもしれない。

 

その『何か』は、火星と関係しているように思える。

その『何か』は、光の世界(来世)を暗示しているようでもある。

そしてその『何か』は、アーサー・C・クラークの有名な言葉が表す

『魔術と見分けがつかないほど高度に発達した科学』を誇示している。

 

さらにその『何か』は、我々とは異なる時間感覚とユーモアを持つが、

我々人類が滅びることは望んでいないようだ。

宇宙の一員として、正しい方向(光に包まれる)へ導こうとしている。

絶望が支配することのない場所へ導くための

壮大な『試み』を繰り返しながら、我々を救済しようとしているらしい。

この『繰り返しながら…』というところがポイントだ♪

つまり、今回が始めてではないらしい。

 

この『試み』には、子ども一人がいる幸福な夫婦が選ばれる。

箱のボタンを押さなければ何も起らない。

ボタンを押せば、

100万ドルと引き換えに知らない誰かが地球上から消える。

自分の利益のために他人を不幸にしたという負い目は、

究極の試練として装置がリセットされるまで続く。

 

100万ドルと引き換えに一人の人間の命が失われようとも、

その『何か』は気にも留めない。

我々にとっての悲劇は、彼の地では別の基準で計られるらしい。

救われる道はひとつ。良心の声に従うことだけ。

 

だから、押してはいけない! どんなことがあろうとも。

他人の命と引き換えにお金を得てはいけない!

しかし、押した後にも救いがあると、この作品は言っている。

究極の選択をすれば、救われる道があるのだと。

そしてその選択こそが、我々の誤った過去を償う唯一の道らしいのだ。

 

我々はすでにたくさんの『ボタン』を押してしまったのだろう。

押してしまった過去は変えられないが、未来は変えられる。

自己犠牲という『究極の痛み』によって。

 

リチャード・ケリー監督が、この題材を選んだのは、

人類の未来に絶望したからなのだろうか?

 

人類の未来が形のない『彼ら』に試されている。

我々の未来は、我々一人一人の日々の小さな選択によって形作られる。

その選択の基準は『利他主義』というものらしい。

他人を犠牲にしてまで、己の欲望を満たしてはいけない。

それは地球の、さらには宇宙のバランスを崩すことになるからだ。

『彼ら』は、常に謙虚であれ!と言っている。

 

この作品の『わからなさ』は、

『彼ら』の思考を我々が理解出来ないということ。

『彼ら』が我々の想像をはるかに超えた存在だとしたら…

我々には『彼ら』を理解することなど出来ない。

『彼ら』の行動を不条理なものと感じるのは、そこに原因がある。

 

『彼ら』は『理解を超えた彼らの方法』で、我々を救済しようとしている。

『彼らの方法』と『我々の方法』の違いが、どれほどのものなのか。

その描写のなさが、

この作品を『わからない』ものにしている。

 

我々が誰かを試そうとする時、究極の選択を迫ることはまずない。

それは、我々の倫理観が許さないだろうから。

しかし試しているのは『我々』ではなく、

理解を超えた『彼ら』なのである。

 

我々にとっての『右』が彼らの『左』で、

我々の常識が『上』を示す時、彼らのそれは『下』を示すとすれば…

なぜ『誰かの命』と『現金』の二択なのか、

我々は決して理解出来ないだろう。

それはまさに、ビートルズの名曲『ハロー グッバイ』と重なる。

 

♪You say yes, I say no

   You say stop, and I say go go go ~

   Oh no ~♪

   You say goodbye and I say hello

   hello, hello ~♪

   I don't know why you say goodbye

   I say hello, hello, hello ~♪

   I don't know why you say goodbye

   I say hello…

 

この後、ポールは…

 

♪I say push, you say no!

   You say stop and I say push, push, push the button ~

   Oh no ~♪

 

 

… と書いたところで、ジョンに止められた。

ジョン曰く、『それは宇宙の摂理に反する!』と。

(またいいかげんなこと書いてる! こういうボケが必要かなぁ…?)

 

ともかく、ビートルズは知っていた。

You が『彼ら』で、I が『我々』であることを。

ビートルズの歌は、我々がボタンを押さないための安全弁なのだ。

だから押してはいけない! どんなことがあろうとも。

そう解釈するとわかりやすい。わかりやすいが矛盾も出てくる。

そういう部分はうっちゃっておく。めんどくさいから♪

(めんどくさいのは、アンタのレビューや!)

 

冒頭からラストまで、観客をグイグイと引き込む監督の演出力。

名優フランク・ランジェラの圧倒的な存在感。

キャメロン・ディアスのリアルな演技を堪能するだけでも十分楽しめる♪

 

日常生活で、いちいち究極の選択をしていたら疲れてしまう。

しかし、『押さなければ人類が救われる』のであれば、

この二択を日常生活に応用することを考えよう!

たとえば…

ここにボタンがあります。

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(ちがう! そのボタンじゃない!)

 

ここにボタンがあります。

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24時間以内にこのボタンを押すと、

あなたのブログへのアクセスが一気に100万増えます。

しかし、あなたの知らない はてなブログのユーザーが一人

このサイトから削除されてしまいます。

それでもボタンを押しますか?
 
はい♪

はい♪ じゃなくて!
もう一度お聞きします。
よ~く考えてから答えて下さいね!
あなたの知らない はてなブログのユーザーが一人
このサイトから削除されるんですよ!
本当にボタンを押しますか?

は~い♪

(あっ、押すんや。 アンタやで、人類滅ぼすの!)

 

 

ネット上の運命のボタンボタンの画像を流用・加工させて戴きしました 感謝!

 

 

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