岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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超初心者向けのとても参考になる物語作りの入門書

 

「物語」のつくり方入門

7つのレッスン
 

円山 夢久 雷鳥社  ★★★★ とっても参考になる!

 

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プロを目指さなくとも

自由自在に物語が作れたらどんなに楽しいだろう。

そう考える人は多数いるはず。

それには作家としての豊かな才能が必要だが、

個人的な楽しみで書くのなら才能などいらない。

ただ楽しく書ければいいのだ。

しかし…

どうやって書けばええねん!

そういう方にオススメの入門書がこれだ。

 

 

これまで何冊か作劇法の本を読んできたが、これが一番わかりやすい。

この手の本はたくさん出版されているが、

本を読んで書く才能が開花したという話はあまり聞かない。

開花した人もいるだろうが、

そもそも創作というものは雲をつかむに等しい作業で、

頭で理解してもできないのが普通だろう。

 

やはり生まれ持った才能に恵まれないと難しい。

才能とは、あまり苦労しなくともできる『能力』だ。

側から見れば大変そうでも、本人はそれを楽しんでいる。

それが努力なのだが、本人はそれを努力とは思わない。

ひたすら楽しいのだ。

 

そういう才能を持つ人には、作劇法の本など不要だろう。

本能的に知っているから。

でも知らない人の方が多いだろうし、

知らないから知りたい人も多いだろう。

 

 

私は画家ではあっても作家の才能はない。

それに気がついたのは二十歳ぐらいのときで、

もう目の前が真っ暗になった。

 

イラストレーションに人生の目標を変えてからも

ストーリーテラー』というものに憧れ続けた。

要するにないものねだりである。

 

神様はなぜ私に物語作りの才を与えてくれなかったのかと、

ずいぶん長い間神様を恨んだりもした。

でもね、ないものはないの。

それが現実。

受け入れなくちゃなぁと思えるようになるまで、

長い 長い 長~い時間がかかった。

 

ある日私はこう思った。

作家の才能がないのは、私の人生に必要ないからで、

絵が描けるのは、それが私の人生に必要だからだと。

そう思って今日まで一所懸命に絵を描いてきた。

 

ところがである。

人生というのは面白い

還暦を過ぎた頃、急にマンガが描きたくなった。

なんと無謀なことだろうと思ったが、

本当はずっと描きたかったのだが諦めていたのだ。

だって絵が描けてもお話が創れなければマンガにならない。

起承転結でドラマをまとめる才能が必要なのだ。

エピソードが書けてもそれは物語の一部にしか過ぎない。

エピソードを構成する才能が必要なのだが、

それが私にはないのである。

 

しかしどうしてもマンガが描きたい。

別にプロになる気はない。そんなことはどうでもいい。

自分で納得できるマンガを描きたい!

還暦過ぎたおっさんがこう考えることは普通ない!

あってもいいけど、まぁないだろう。

なくてもいいじゃないか。

 

そう思って描き始めたのが『STAP風雲録』というマンガである。

自分でも面白いんだかどうなんだかわからないが、

『STAP風雲録』を描くにあたって作劇法の本を読んで勉強した。

60の手習いである。

ヘェ~ 物語ってこうやって作るのかぁ~ 知らなかったぁ~

と、文字通りの超初心者である。

 

でもねえ、やはり才能はないなぁと改めて思った。

真似ごとはできるけど、そこまでしかできない。

う~ん…

 

しかしね、人間伊達に年はとらない。

二十歳のころは目の前が真っ暗になったが、

還暦も過ぎるとそう簡単には絶望しないわけ。

まぁいいや。才能ないのが自分なんだから、

才能あったら自分じゃなくなる

自分の人生を生きようと。

 

才能がない人にしか描けないマンガを描こうと腹を括る。

人間ここまで開き直ると怖いものはない。

逆に夢が膨らむ

 

そうしていろいろと作劇法の本を読んだのだが…

どうも今ひとつピンとくる本に巡り会えない。

自分の才能のなさを棚に上げて言うのは申し訳ないが、

すんなりと頭に入ってこないものが多い。

 

特に作家が書いたお話作りの本は、創作の裏側が見えて面白いのだが、

やはりその人だからこそのやり方で汎用性が少ない。

作家としての心がけのようなものは学べるが、

あなただからできるんでしょ?

と言う内容が多いように思えるが、これは仕方ない。

本来、創作とは個人的なもので、その人一代で終わるものだから。

他者に伝授するのは難しいのだろう。

 

ハリウッド式の映画脚本術なども参考になるが

初心者の私には難し過ぎて身につかない。

かと言って独学では限界があるし…

そう思っていた時に見つけたのが本書である。

 

 

ではどんな本かと言うと、

娯楽小説の書き方の本で、超初心者向けの入門書である。

入門書は数あれど、文字通りの入門書は少ない。

この本は文字通りの入門書なのである。

もうね、笑っちゃうぐらい超初心者向けの本なのだ。

でもって、

以下の理由で、お話作りのノウハウを知りたい方にお勧めしたい。

 

(1)

超初心者には、書かれている内容すべてが役に立つ。

 

(2)

壁にぶつかっている中級者には、

書かれている内容の3分の1ぐらいが役に立つ。

 

(3)

上級者には不要かもしれないが、

初心に帰る謙虚さを思い出させてくれるかも?

 

 

物語の作り方に一定の法則はあっても、

こう書かねばならないという規則はない。

自分が書きたいように書けばいいのだが、基本を知っておくことは大切だ。

面白いアイデアをどう思いつくかは人それぞれなので伝授できないとしても、

そのアイデアを『物語』としてどう構成すればいいのか、

どうすれば読者の興味を引くお話になるのかという基本はあるので、

身につけておくに越したことはない。

 

何を書いていいのかわからないという超初心者には、

まず『こうしてみてはどうだろう』というスタートラインが提案され、

目から鱗が落ちると思う。

 

このアドバイスが本当に笑っちゃうぐらいの初歩なのだが、

なるほどなぁ~と私は痛く感心した

 

ところがこの超初心者向けのアドバイスは、

書き慣れた上級者が忘れがちなとても大切なことを教えてくれるので、

中級者以上の方も謙虚な姿勢に戻れるはずだ。

 

何作か書き、それなりに評価を得て、

書き方のコツがつかめてくると書くことが楽しくなるが、

同時に伸び悩むという落とし穴も待っている。

 

そういう時、下手に自信がある人より、

どんな初歩的なアドバイスも貪欲に吸収しようという人の方が、

スランプから早く立ち直れるのではないだろうか。

 

超初心者向けアドバイスって何だろう?

という好奇心を持ち続ける人は伸びると思う。

そういう人にこの本は必要とされるはずだ。

お勧めいたします

 

 

 

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