M3GAN ミーガン
2023年 アメリカ/ジェラード・ジョンストーン監督作品
満足度 ★★★★☆ 予想以上に面白い♪
『チャイルド・プレイ』という優れた作品があった。
チャッキーという電池仕掛けの人形に殺人鬼の魂が乗り移り、
殺戮を繰り返すというホラー映画だ。
人気があって第5作ぐらいまで作られたんじゃなかったか。
とても良く出来た怖い映画だった。
これを数年前にリメイクしたが失敗作となった。
失敗の原因は殺人人形チャッキーをAIロボットに変更したことだ。
おもちゃ会社をクビになった作業員が会社を逆恨みして、
AI人形のプログラムを勝手に変更したことで、惨劇が起こるという脚本。
これが全く面白くなかった。
オリジナルのチャッキーには、
殺人鬼の魂が乗り移るという空想性があったが、
入力したプログラムの暴走という設定が今ひとつピンとこなかった。
AI搭載の殺人チャッキーも造形的に魅力に欠け、
印象に残らなかったのだ。
この『ミーガン』も同じAI人形の暴走というテーマなので
それほどの期待はなかったのだが、
YouTubeの動画で話題になったミーガンのくねくねダンスが
何ともはや魅力的なのでブルーレイを買って鑑賞した。
果たして面白いのだろうか?
♠︎
物語自体に新鮮味はない。
もう定番中の定番の『暴走ホラー』である。
『13日の金曜日』のような血が飛び散るスプラッターではなく、
心理的にジワジワと恐怖が増すというタイプだ。
このジャンルではこれまでにロボットやコンピュータの暴走があった。
ある日、人間に敵意を持ち、人間の命令に背くというヤツだ。
『ミーガン』もこのパターンを踏襲しているのだが、
これまでの暴走物とは一味違う。
この一味が全米大ヒットの要因だろう。
交通事故で両親を亡くしたケイディという女の子を
おもちゃ会社の優秀な研究者である伯母のジェマが引き取る。
しかしケイディはなかなかジェマに懐かない。
カウンセリングを受けさせたり色々と画策するのだが上手くいかない。
そこでジェマは開発中のミーガンというAI人形のプログラムを
ケイディ向けに書き換えて完成させる。
想像以上にミーガンに心癒されるケイディを見て安心するジェマ。
ジェマはミーガンの開発で会社から絶賛され、
本格的に全国販売へ向けて忙しい日々を送ることになる。
ジェマ自身はケイディに関わる時間がどんどん減り、
そのほとんどをミーガンに任せることになった。
自分の目の届かない場所でもケイディを守れるように、
ジェマは新しいプログラムをミーガンに入力する。
『あらゆる出来事からケイディを守るように』
この『あらゆる出来事』という漠然としたコマンドが惨事を引き起こす。
コマンドは正確に具体的に入力しなけれなならないが、
何しろ忙しいジェマはそれを怠ってしまう。
やがてミーガンは、このボンヤリしたコマンドを独自に解釈し始める。
ちょっとした言い方からケイディを泣かせてしまう。
これをミーガンは外敵の攻撃と認識し始める。
同級生の嫌がらせも吠える隣人の犬も
全てが『守らねばならない事柄』に含まれていく。
やがてジェマの制止命令を独自に解除して、
ひたすらケイディを守るために、外敵と認識したものを抹殺し始める。
もう誰にも止められない。
♠︎♠︎
こういう物語のパターンは定番なので新味はないのだが、
とにかくミーガンというキャラクターが秀逸である。
リメイク版『チャイルド・プレイ』の失敗を大きく超えている。
観る前は、かなりCGを多用した作品と思っていたが違うのだ。
特筆すべき点が3点あるが、
まず一つ目はミーガンの頭部である。
これはCGだろうと思ったが精巧なロボットだった。
今では当たり前となったアニマトロニクスという技術だ。
この技術でミーガンの顔のアップが作られているので、
その存在感はとてもリアルである。
デジタルデータではなく、実際に手で触れるミーガンがいるのだ。
2番目は、ミーガンの上半身だが、
これは両腕を文楽人形のような操作法で、
人形師が人形の手首に細い棒をつけて操っている。
この操作棒を仕上げの段階でCG処理しているのだろう。
ほとんどがアナログ操作で、ちょっとぎこちない動作が魅力的だ。
そして注目は3番目のミーガンの全身である。
これはエイミーという女の子が衣装を着て演じている。
顔だけゴムのマスクをかぶり、その他は全て子役の演技である。
このエイミー・ドナルドが凄い才能の持ち主で、
四つん這いになって走るシーンも自分で演じているのだが、
CGかと思うぐらい滑らかで、そして早いのだ!
これにはスタッフも驚いたそうだ。
仰向けに倒れた状態からワイヤーなしで立ち上がるのも彼女の得意技。
そしてあのくねくねダンスである。
これは振り付け師が考えたダンスをエイミーちゃんが演じている。
踊った後に、助走なしで前方にトンボを切るのも彼女自身である。
CGもスタントも一切使っていないから驚きなのだ。
♠︎♠︎♠︎
CG全盛のこの時代にあって、
アナログの技術も絶やさずにしっかり継承しているところはさすがだ。
特典映像にメイキングシーンがあるが、
それぞれのスタッフが生き生きと仕事をしている姿は清々しい♪
日本もこうあるべきなんでしょうね。
残酷なものや気持ちの悪いトラウマになりそうなホラーは嫌だ
という方にオススメのホラー映画の秀作です。
未見の方は是非どうぞ!
★ 岩井田治行コミックス ★ にほんブログ村/ ★