1998年 アメリカ/ジェレマイア・S・チェチック監督作品
★★★★ 個人的に好き♪
その昔、『おしゃれ㊙︎探偵』というイギリスのTV番組があった。
当時はアメリカTV全盛で、ヨーロッパのTV作品は少なかった。
そんな中でも、イギリスのTV作品はいくつか放送された。
その内の一つが『おしゃれ㊙︎探偵』だった。
とてもいい邦題だと思うが、原題は『THE AVENGERS』である。
007のスパイ映画ブームの頃に制作されたので、
秘密情報員の『秘密』と探偵を足して『㊙︎探偵』としたようだ。
今ではアメコミのヒーロー大集合映画の方が有名だが、こちらが元祖。
♦︎
イギリスでは大人気の長寿番組だが、日本人の肌には合わなかった。
山田洋次監督の言葉に『夕日は日本人の原風景』というのがある。
確かにそうだ。ゆうやけこやけのあかとんぼ~♪ である。
情感というのが日本人は大好きなんだ。寅さんである。
『THE AVENGERS』に情感などない(あってたまるか)
これは徹底した英国タッチのドラマなのだ(それどんなんや?)
前代未聞、驚天動地、荒唐無稽でおシャレ(そんなんである)
日本人が喜ぶわけない。私はひっくり返って喜んだけど♪
当時、『おしゃれ㊙︎探偵』を欠かさず観ていた友人はひとりだけ。
日本人って、荒唐無稽を見下すのだろうか?
荒唐無稽を楽しむという風土が薄い。夕日を愛するお国柄だから。
『夕日のガンマン』なんてタイトルだけで泣けて来る。
イタリア人の通俗性は、日本人と50歩100歩だと思うけど♪
イギリス人が夕日を背に立っても似合わない。
イギリス人が山高帽にスーツ姿でお茶を飲んでいる。
何かオシャレである。
コネリーおじさんの007、そういえばお茶飲まない。
コネリー・ボンドにお茶は似合わない。
お茶が似合うのは、本編の主人公ジョン・スティードである。
こう書くと、かなりオリジナル作品に詳しいと思われるが、
実はよく覚えていない。断片的にしか思い出せないのだ。
ところがその断片が今でも私をワクワクさせる♪
♦︎♦︎
主人公ジョン・スティードは探偵で相棒がいる。
エマ・ピールという女性だ。
ダイアナ・リグが演じた2代目エマ・ピールが大人気だった。
身体にピッタリ吸い付くような全身黒づくめのスーツ姿。空手使い。
ブルース・リーが登場する遥か前の空手であるが、カッコよかった!
スティードの相棒エマ・ピール役の女優は、
初代が『ゴールドフィンガー』のボンドガール、オナー・ブラックマン。
ダイアナ・リグのエマさんは2代目で一番人気があった。
エマさんは3代目まで続いた。
一方のジョン・スティードは、山高帽に三つ揃いのスーツに英国傘。
身のこなしが何ともソフトでユーモアがあった。
どう考えても夕日を背に立つタイプではない。
(オリジナルのジョン・スティードと初代エマ・ピール)
(一番人気があったダイアナ・リグのエマ・ピール)
(女優名は忘れたが、3代目エマ・ピールが一番キュートだった)
回が進むごとに荒唐無稽さが増した。
一応、探偵物なのだが…
『トリフィドの日』まがいのトンデモ宇宙植物は序の口。
殺人ロボットあり。パズルで殺人を行う男との対決あり。
つまり、何でもあり。スタッフが楽しんで創っていた。
それを支える視聴者がいるという幸福な時代だった。英国の話だけど。
私は遠く離れた日本にいて、そういう大人の楽しみを味わった。
私の記憶が正しければ、第1シリーズでは、
今週はどんな車に乗って登場するのだろうとワクワクした。
アメリカの大衆性とはちがうシャレた世界観が新鮮だった。
でも夕日は出て来ない。だから視聴率は上がらなかった。
そういう時代背景を知らないとこの映画は楽しめない。
往年のファンを対象にお金をかけて創られたリメイク作品である。
しかし… これは失敗作だ。残念だけど。
♦︎♦︎♦︎
『おしゃれ㊙︎探偵』が支持された60年代にしか通用しない世界観満載。
今風にCGも使っているが、噛み合っていない。
この作品の世界は『アナログ』なのだから。
悪役にコネリーおじさんを配したのも失敗。ミスキャスト。
エマさん役のユマさんもミスキャスト。
気象という自然現象を主人公の敵対する『もの』にしたのも大袈裟すぎ。
大金をかけたわりに、空振りが目立つ残念な作品になった。
オリジナルタッチなら、コネリーおじさんほどの大物は出ない。
その代わり、気象人間なる摩訶不思議な犯罪者が登場したかも!
雨女、稲妻男に雪男という天候を操る特異な部下がいるかもしれない♪
ただ、アメコミのキャラとはひと味違うのである。
こういう荒唐無稽の犯罪者が、ごく限られた地域で事件を起こす。
こうなれば『おしゃれ㊙︎探偵』ワールド全開だ!
本作は映画ということで、豪華に仕上げたのが失敗だった。
『おしゃれ㊙︎探偵』の本質は、TVドラマなのだから!
ただ、主役のレイフ・ファインズのスティードさんは良い! GOOD!
オリジナルのスティードさんを引き継ぎながら新鮮味がある。
オープニングシーンなんかゾクゾクする♪ 往年のファンだけ。
オリジナルにないミニストリーという秘密組織が出てくる。
ここの局長がマザーという男性で、副局長がファーザーという女性だが、
マザーは車椅子でファーザーは目に障害がある。
こういうマニアックな設定はまさに『おしゃれ㊙︎探偵』である。
その他、くまの着ぐるみ姿で行う悪の会議。いいぞ♪
襲いかかりそうで襲いかからない3人の尼さん。いいなぁ~♪
何だか知らないけど、透明になったまま元に戻れない局員など感涙もの!
どう考えても『夕日』の国民性とはかけ離れすぎ!
ああ、これじゃ無理だなぁ… と思いつつも、楽しんで2回観た!
ぜひ、私だけのために続編を創ってほしい。低予算で!
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