岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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小・中学生向きのプロマンガ家養成本の良書♪

 

 

入門百科+ プロの技全公開!

まんが家入門
 

飯塚祐之 小学館  ★★★★ コンパクトにまとまっている!

 

 

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マンガ家入門書は数あるが、

これはかなり本格的なプロ養成本と言える。

面白いのは、すべての漢字にふりがなが振ってある点だ。

つまり、版元の小学館が未来のプロマンガ家を育てる目的で企画した本である。

巻末には、コロコロコミック、少年サンデー、ちゃお、Sho-Comi

そして小学館の新人コミック大賞の応募要項が詳しく載っているのがその証拠。

 

日本は世界でもユニークなマンガ文化の国だが、大手出版社がバックアップして、

子供の頃からその人材を育てようという本を出版するまでになった。

そこまでしてマンガ家を育ててどうする? と突込むなかれ。

日本とは実にそういう国なのである。

 

私が子供の頃は、マンガ家なんて社会的地位などなかった。

特に子供マンガ家は。

藤子不二雄先生が若かりし頃、

確定申告の職業欄に、恥ずかしくて『マンガ家』と書けず、

『童画家』と書いていたという話を聞いたことがある。

マンガ家の地位とはそんなものだったのだ。

 

それが今や小学館という大企業が全面的に後押しをして、

未来のマンガ家を育てようと入門書まで出す時代になったのだなぁと、

まずそこに感動やら感心やらするのである。

 

マンガ家は『タコ部屋生活』を強いられ、

どんなにお金を稼いでも、そのお金を使う時間がないと聞く。

そんなシステムを改めるでもなく、ひたすら人材を育てるのはどうよ? とも思うが、

それでもマンガ家を目指す人は後を絶たない。
好きな人はタコ部屋でも目指すのだ。

だからこの本は小・中学生向き『タコ部屋入門書』とも言える♪

 

全174ページの中に、小学館で仕事をされている5人の人気漫画家のインタビュー、

マンガの道具、絵の上達法、キャラクター作りのコツ、お話作りの技術、

構成の基本、仕上げの秘密、パソコン作画の基礎知識と盛りだくさんの内容。

よくここまでコンパクトにまとめたなぁと思う。

それだけ商業誌のマンガ制作法が確立しているということなのだ。

 

本の最後に冒頭にも書いた小学館のマンガ賞の応募要項

(資格・枚数・寸法・描き方・締め切り・応募の方法・宛先)が詳しく載っている。

 

子供の頃からマンガ家を志望する人には役に立つ実用書である。

そこが『タコ部屋』であっても構わない。

マンガ家にチャレンジしたい!

そういう方には入門書として、とても良くできているのでオススメできる。

 

著者の飯塚裕之氏は、小学館のマンガ編集者なので、

小学館カラーのマンガに沿って解説している点に注意。

主に、小・中学生向きマンガ(少女マンガを含む)を作例に挙げている。

ここに書かれた方法論はマンガ制作の基本ではあるが、

あくまで小学館向けのマンガ作成法だと思う。

 

 

♥♥

こういう本を読んで思うのは、

とにかく、日本ではマンガがビジネスとして定着し、

制作法が確立されているということだ。

昭和20~30年頃は、マンガに割くページ数に限りがあり、

今のように何十ページも掲載できなかった。

アシスタントもいない時代、マンガは一人で描くのが普通だった。

 

今のマンガの割付は、1ページ縦3段、コマ数は5~6コマが平均だと思う。

ページ2コマなんて贅沢もザラにある。

昔のマンガが読みにくいのは、縦4段、ページ12コマが平均だからだが、

限られた紙数の中でドラマを描こうとすれば仕方のないことだった。

 

先人のマンガ家たちは思ったことだろう。

『ああ、何百ページもマンガが描きたい!』と。

その想いが今の時代なのだ。

 

ところが皮肉なことに、

何百ページも描けるようにはなったが、

他の描き方では職業として成り立たなくなってしまった。

つまり、雑誌連載をしなければ食えないのだ。

 

読み切りをコツコツ描いてもマンガでは食えないだろう。

連載法も週刊誌が主流で、

月刊誌に月20ページ連載では成り立たないと思う。

隔月で連載というのも職業としては難しいだろうし、

それを気長に待ってくれる読者は少ない。

 

作品のクオリティを高めるために、十分な時間や工夫を費やすことが難しい。

時間をかければいいものができる訳ではないが、

人間の才能には様々あり、必ず向き不向きがある。

週刊連載ではどうしても本領を発揮できない人もいるはずだ。

描き下ろしが一番向いているとか、

全編アナログのフルカラーが向いてるとか。

そういう才能が、今の商業誌で生まれることはまずない。

 

この本を熟読し、描いたマンガを巻末のマンガ賞に応募し、

出来が良ければデビューすることができる。

ただそうしてデビューしても、

その先に待っている世界は商業誌の確立されたマンガ制作システムであり、

仕上がる作品の質感(手法)は、ほぼ同じものになる。

 

よほどの大天才でない限り、

日本のマンガシステムから生み出されるものと『違うマンガ』は生み出せない。

絶対に生み出せないと断言はできないが、かなり難しいと思う。

 

他の方法としてWebマンガという創作形式があるが、

職業にするなら、やはり商業誌的な作品を描かざるを得ないだろう。

読者がそれしか求めていないのなら仕方ないことだが、

マンガの描き方はもっと他にあると思う。

そしてマンガを描く才能も。

 

そういう才能を育てるためには、

やはり職業として成立するためのシステムが必要だろう。

それも大量生産でない方法が。

 

我々は当分新型コロナくんと付き合わなければならない。嫌でも。

テレワークという出社しないで働く方式が浸透していくだろうし、

スマホ片手にお仕事』というスタイルも広がるかもしれない。

 

個人的には、コロナ後の世界では、

1週間でマンガを何十枚も描かない世界ができてほしいなと思う。

短時間で描く手法では、どうしても質感が似てしまう。

私は商業誌のマンガ手法にあまり興味がないので、

もっと『他の何か』を探してみたい。

 

コロナ禍が幸いして、そういうマンガが現れて欲しいと思う。

夢のまた夢の、そのまた夢だろうか?

 

 

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