チャイルド・プレイ(2019)
2019年 アメリカ/ラース・クレヴバーグ監督作品
満足度 ★★☆ 微妙~♪
もう30年以上前になるんだな~と。
VHSのビデオレンタルで観た『チャイルド・プレイ』という映画。
B級のホラーとしてよく出来ていたなぁ~と記憶している。
ヒットしたため続編、続々編と作られシリーズになった。
人間の魂が人形に乗り移るというアイデアは過去にあったと思うが、
その映像化に新味があり、
CGなど使わぬアナログタッチが魅力的だった。
5作ぐらい作られ、もう終わりかな~と油断してるところに
2019リブート版が作られた。
リメイクではなくリブート(再起動)ということは、
仕切り直して、新シリーズの第1作なのか?
どんなんかな~と観てみた。
♣︎
再起動なんだから、思い切って設定を変えちゃえ!とばかりに、
グッドガイ人形の設定が変更されている。
なななんと! 今回はAI搭載のグッドガイ人形なのだ。
人件費節約のため、ベトナムの工場で組み立てられるグッドガイ人形。
やる気のない従業員が仕事サボって、ボケ~としてると、
すかさず工場長に怒鳴られる。
『サボるなと言ったろ、このボケ! お前なんかクビだ~!』
もうね、いきなりクビにされちゃいます。可哀想です。
カチンときた従業員は腹いせに…
人形に搭載するAIプログラムにイタズラを!
抑制されている行動・言語制限・暴力という項目を全て削除。
そのプログラムを組み込んだまま出荷しちゃいます。
ア~ララ、知~らないっと。
このオープニングには期待感があった!
で、このグッドガイ人形がアンディ少年のお家にやってくる。
抑制機能が全部削除されたAIはどうなるのだろうか?
多分、自由に人間社会を学習しながら成長していくんじゃないの?
時々悪態などつきながら♪
でもそれではホラーにならない。
なんとかホラーにしなければならない。
もうね、無理やりホラーにしちゃいます。
そもそも、行動・言語・暴力が抑制されているということは…
抑制しなければ暴走するプログラムなのかなと?
そんな危ないAIを最初から作るなよと、ひとツッコミ入れた私。
最初のプログラムを無難なものにしておけば暴走しないんじゃない?
AIについてよくわからない私はそう思うのだった。
そこで松原仁さんの『AIに心は宿るのか』(インターナショナル新書)
という本を読んでみた。
この本には、AI脅威派とAI擁護派がいると書かれています。
将棋界では、この2派が『絶妙なバランスを保ちながら併存』してると。
羽生善治さんなどは、かなり冷静にAIを受け止めている。
AIの脅威というのは人間を脅かす存在になるというもので、
SFなどに盛んに描かれました。
手塚漫画の『火の鳥 未来編』なんか怖かった。
人工知能が人間に代わり、というか人間並みの感情を持ち、
勝手に核戦争を始めてしまうのだから。
『鉄腕アトム』では、ロボットが人間の仕事を奪う存在になり憎まれた。
便利はいいけど、人間の居場所がなくなるのではという不安と恐怖。
チャップリンも機械は人間を幸せにしないという映画を作った。
アトムのような極めて人間的な機械とは共存してみたいが、
搭載される人工知能が『冷たいもの』だとしたら…
こらアカン。早めに始末しとこう みたいな。
でも松原仁さんは、AI脅威論について、
『AIが人間を敵視する動機が乏しいことから、
専門家は現実的にあり得るディストピアとして、
悪しき人間が、AIを道具として用いて他の人間を支配することを
推測しているようです』(P.67)
と書いています。
つまり人間が悪用しなければ、AIが自ら人間を敵視することはない、
ということらしいのだ。
しかし2020年2月に日本人工知能学会が発表した
AI研究に関する倫理指針には、AI研究者が守るべき基準として
「安全性」「社会に対する責任」の他に
AI自身に対してもこの倫理指針を守るよう求めているといいます。
これはAIが自らの意思を持って動くことを想定するだけでなく、
場合によっては暴走するかも? ということでしょう。
AIがどこまで進化するかは研究者にもわからないらしい。
怖いです!
とは言え、AIが人間並みの意思を持つのはまだ先のことでしょう。
現在のAIは人間には容易にできる行為、
『なんとなく』という意思決定が難しいそうだ。
人間は、なんとなく『旅行でもするかな』と思うけど、
『何となく』というプログラムをAIに理解させるのは大変らしい。
さらにAIは人工知能なので、人間のような体を持たない。
だからどこまでが自分でどこからが他人なのかわからないそうだ。
そこで人間のような身体、つまりロボットという形が必要になる。
リブート版のチャッキーは、この身体を持ったAIというわけ。
このAIは自分がチャッキーで、アンディ少年は友だちだと理解している。
そしてなんとかアンディ少年の友達になろうと努力する。
つまり、ものすごく人間に近いAIという設定なのだ。
この人間的感情?のようなものがあるため、
アンディに気に入られようとする行為が殺戮に至ってしまうのだ。
リブート版チャッキーは、あまり可愛くないです。
松原仁さんは、AIを社会で野放しにしておけば、
人間がコントロールできないほどの変化を引き起こす可能性がある
と危惧している。
これは情報の混乱や自動運転車などによる事故という形で
現れるかもしれないけど、殺戮というのはどうなのよと。
設定がリアルだからこっちもリアルに反応してしまう。
AIとの共存社会は避けられない未来であり、
我々はAIと共に生きていく他ないらしい。後戻りはできないから。
人間がどうAIをコントロールするかという、
結局は人間の力が試される時代になるようです。
その意味では、リブート版チャッキーは極めて現代的なのだけど、
現代性をその設定に組み込んだことが逆に物語を狭くしている。
ホラーというのは、その基本は一種の空想物語で、
特にチャッキーに現代的な設定は似合わない。
最初はとても期待して観ていたのだけど、
殺戮が始まると、何だかな~と。
やはりチャッキーには、プログラムの暴走ではなく、
なんかこうおどろおどろしいものの方が似合うと思うのだ。
じゃあ、オリジナルのチャッキーはどうだったのよと、
久しぶりにオリジナル作品を観てみると…
チャイルド・プレイ(1988)
満足度 ★★★★ 面白~い♪
ハイ、オリジナルのチャッキーです。久しぶり~♪
でもって、面白~い!!
もうね、なんか面白いのね、やっぱり。
チャッキーはこうでなくっちゃ~って感じでワクワクドキドキでした。
トム・ホランド監督って、上手いです♪
♣︎♣︎
さあ、こちらはアナログ時代のお話。
深夜。絞殺魔チャールズ・レイがノリス刑事に追われて逃げてきます。
相棒エディは、レイを置き去りにして逃げてしまう。
さらにレイは刑事に撃たれ、瀕死の重傷を負う。
ふと見ると、目の前にはオモチャ工場が。
そして工場に逃げ込んだレイは妙なことを口走る。
『誰かいないか? 早くしないと間に合わん!』
でもって、グッドガイ人形を見つけると奇妙な呪文を唱え始めます。
『ナントカ~ カントカ~ ダンベラ~!
てめえら~ 覚えてろよ~! 復讐してやるぜ~!』
するとアラ不思議~ 工場の上空に突如暗雲が立ち込め、
ものすごい稲光が、ドッカーン、ガラガラガラー!
ハイ、絞殺魔の魂が人形に乗り移りました~
いいなぁ~ この荒唐無稽さ、この純粋さ!
もう映画は作り物だから何でもあり~!
この絞殺魔レイが乗り移ったグッドガイ人形がアンディ少年のもとへ。
リブート版では小学校高学年ぐらいのアンディ少年ですが、
オリジナルでは幼稚園ぐらいかな、可愛いです♪
このアンディ少年の愛らしさもオリジナルの方が優ってます。
こういう子を見つけるんですね~ オーディションで。
『ハ~イ! ボク チャッキー! ハイディホー!』
ほんとに可愛いグッドガイ人形ですが、
この人形はアンディにだけ本音で話しかけてるようなんですね。
大人のいるところでは人形のフリしてますが。
そしてアンディのお母さんカレンの友人マギーが謎の死を遂げ、
裏切り者のエディも殺されと物語はスピーディに進む。
犯人はもちろん人形に乗り移った絞殺魔レイだが、
それを薄々感じてるのはアンディ少年だけ。
『チャッキーは生きてるよ~!』
というアンディ少年の言葉を周囲の大人は誰も信じない。
観客は真相を知ってるからイライラします。
ここまでの緊張感は流石に面白い。
それから色々ありまして~
アンディ少年はちょっと妄想癖があるようだと、
州立病院に預けられちゃいます。
家で独り、チャッキー人形に話しかけるアンディのママさん。
『あんた本当に生きてるの? 何か言いなさいよ!』と。
でも人形は『ハ~イ! ボク チャッキー!』としか答えない。
あたし何やってんだろうと、苦笑いのママさん。
何気に人形が入っていた箱をひっくり返すと…
コロンと何かが床に落ちる。単1電池が2個。
箱の説明書きには、”電池付き”の表示が。
じゃあ今まであの人形は電池なしで喋ってたの! アラやだ~!
ここから一気に恐怖が加速します。
とってもよくできたホラーなんですね、ホランド監督さすがです!
♣︎♣︎♣︎
こうして見比べると、やはりオリジナルの方が数段面白い♪
オリジナルの強みというのもあるけど、
やはりそれだけじゃないですね。
技術的にはリブート版の方が優れているのだろう、多分。
これは『猿の惑星』のリブート版でも同じ。
しかし技術の向上が”面白さ”に必ずしも繋がらない。
“感動”は技術を超えたものだからです。
まず、オリジナルは登場人物が生き生きしている。
人物造形に生々しさがあるのだ。
アンディ少年の愛らしさはもちろんだが、
母親役の女優がとても魅力的。
さらに事件を追うノリス刑事役の俳優もGOOD!
絞殺魔レイの不気味な存在感。
どれをとってもオリジナルの方が印象に残る。
あっ、監督もオリジナルの方が上手い!
アンディ君が可愛い♪ そしてチャッキーが大きい!
デジタル撮影になる前の映画作りには生々しさがあった。
『スターウォーズ』『エイリアン』『プレデター』など全てがそうだ。
撮影現場にもスタッフ、キャストの生活空間にも
デジタルはほとんどなかった。
そういうアナログ感が画面から伝わってくるのだ。
そしてやはり面白いのは物語だろう。
リブート版も空想的だが、その設定が現実的なのに比べ、
オリジナル作品は純粋な空想物語であること。
絞殺魔レイは、自分の魂を他の肉体に移せる秘術を習得している。
この荒唐無稽な設定が良いのだ。
本来なら他人に乗り移るはずが周囲に人がいない。
ふと見るとそこに一体の人形が。
この人形に乗り移るという発想がとんでもないのだが、
観ていてワクワクする面白さがある。
リブート版のチャッキーはプログラムの暴走だから、
人形である必要がなく、ロボットでもいい。
人形に乗り移るという発想が不気味で、
乗り移る魂が可愛さと正反対の絞殺魔であること。
ある意味、映画版のフランケンシュタインの怪物なのだ。
さらに面白いのは、乗り移った魂が一定時間人形の中にいると
大変なことが起こるという設定だ。
ネタバレになるので書けないが、
この大変な設定が後半のサスペンスを盛り上げる。
チャッキー人形の動きは、当時の技術の限界があり、
部分的に人間が着ぐるみを着て演じている。
遠目にはそれとわからない着ぐるみチャッキーだが、
この着ぐるみの動きが実に不気味なのである。
着ぐるみだから動きにくいのだろう。ぎこちない。
しかしそれが怖い。
いくら書いても書ききれない。
オリジナル版チャッキーの面白さは、実際観て感じるのが一番いい。
チャッキーは、B級(低予算)映画である。
しかし優れたアイデア映画なのである。
こういう質感の映画はもう作れないのかなぁと寂しく思う。
肩の凝らないホラー映画を観たい方。
新旧を見比べながら観るのも一興でございます♪
★ネット上の『チャイルド・プレイ新旧』の画像を流用し、加工させて戴きました★
感謝!
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