岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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半沢直樹の倍返しって、どうよ?

 

 

TVドラマ『半沢直樹

 

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暑い!夏である。

そしてテレビではドラマ『半沢直樹』が熱い!

いや、暑苦しい!

実はこのドラマを観るのは今回が初めてなのだ。

話題になっていたのは知っていたが、食指が動かなかった。

そもそも朝ドラ以外、テレビドラマをほとんど見ない私である。

そんな私がここ数ヶ月、色々とテレビドラマを観始めた。

主に日本のテレビドラマを中心に観ている。

そして『半沢直樹』のダイジェスト版を観て興味を持った。

 

金融や銀行の仕組みについてはよくわからないので、

「ああそうなんだ…」程度のボンヤリした理解力で観ている。

半沢直樹』は面白い。続きが気になる。興奮する。

そしてだんだん半沢直樹が暑苦しくなってきた。

あんた、厄介な奴やなぁ~と!

 

 

このドラマは、いわゆる勧善懲悪物の新機軸なのだろう、多分。

水戸黄門』や『遠山の金さん』の現代版のようだ。

傑出した人物が悪者を懲らしめるというお話。

観ていてスカッとするやつだ。

 

確かにスカッとする。

それほど悪がしこい奴らがウジャウジャ出てくるからだ。

こいつら仕事もしないで何やってんだろうと思うほど、

本業の仕事をしないで意地悪ばかりする。

お前たち、一体何なんだ?

 

何のために高給取ってるんだと思うのだが、とにかく仕事をしない。

何かしてるようだが、働いてるようには見えない。

意地悪するのが仕事のような人たちである。

 

この傲慢で意地悪の塊のような人間に半沢くんは囲まれる。

ある意味、自分で引き寄せる才がある。ここポイント♪

半沢直樹は周りに悪人がいるとき、その存在が光輝く。

周りが善人では輝かないという厄介さを持つ人物なのだ。

 

そんな半沢くんは常に睨まれる。

睨まれるようなことを進んでしてしまう。

どんなことかというと『正しいこと』をしてしまう。

半沢直樹に『ほどほど』というモットーはない。

常に全力投球する。

全力で正しいことを言う、行う。控えめという力加減を知らない。

 

「1+1は2です! 文句などないでしょう!」って言っちゃう。

これは危ない。

意地悪人間にこう言うのは、火に油を注ぐようなもの。

そういうことを半沢直樹は平気で言っちゃう。

徹底的に言い負かす。論破する。自分が正しいから。主人公だから。

 

「私は1+1は2だと思うけど、あなたはどう思いますか?」

なんてまだるっこしい言い方はしない。

「2です! 決まっています!」って言っちゃう。

言外に「あんたそんなことも知らんのか!」と言ってる。

「正しいから正しい!と言ってどこが悪い~! 」って恫喝しちゃう。

誰も半沢直樹に反論できない。正しいから。

で、反論されると伝家の宝刀を抜く。

 

やられたらやり返す。倍返しだ!

あっ訂正。

おまえだけは、100倍返しだ~!!

 

暑苦しい。うっとうしい!

この倍返しって、どうよと思わないのだろうか?

 

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(おまえは暑苦しいのだ!)

 

♣ ♣

私は半沢直樹に聞きたい。

倍にして返したことをどうやって証明するのだ? と。

 

多すぎたらどうするんだ?

少なかったら、どう追加するんだ?

そもそも『やられたことの倍』をどんな基準で測るのだ?

 

お饅頭を2個取られた。

倍返しだ!

相手のお饅頭を4個取れば完了する。

 

悪口を言われ傷ついた。

倍返しだ!

倍の悪口を言って、2倍傷つけてやる。ザマアミロ!

 

相手が2倍傷つかなかったらどうする?

10倍傷つけてしまったら、どう責任を取るんだ?

 

大和田常務を土下座させたとき、視聴者は大喝采したことだろう。

しかしその後、半沢は頭取に呼ばれこう言われた。

「半沢、よくやった。しかし最後のはやりすぎだ!」と。

半沢は大和田に多すぎるお返しをしてしまった。

少なくとも頭取にはそう見えた。

 

そういうとき半沢は「申し訳ございませんでした」としか言わない。

倍にして返すと言って、倍以上返してしまった。

返す量を間違えたにも関わらず、半沢は責任など取らない。

仕返しというのは本来そういうものなのだ。

怒りがこもっているから多くなる。

 

そもそも『やられたことの倍』を目に見える形で証明できない。

倍にして返したというのは、あくまで半沢の『主観』だから、

返された方が「今のはちょっと多かったよ~」と言ったらどうする?

ちょっと多かったというのも相手の『主観』で、

相手だって正確に『どれだけ多かったか』説明できない。

  

しかし半沢直樹は『正確に倍返しできる能力』を有する。

人物設定としてそうなっている、多分。

つまりこの時点で半沢直樹は人間ではない。

そんなことができる人間などこの世に存在しない。

荒唐無稽、異形の生物なのである。

 

半沢直樹という異形の生物は、

されたことを量として測れる能力を持っている。

自尊心、誇り、屈辱、惨めさ、悲しさ、悔しさ、怒り

これらの人間的感情を全て数値化し、または数量化して、

正確に『倍または百倍』という形でお返しができる特殊能力者。

 

マーベルやDCコミックのヒーローすら成し得なかった能力の持ち主。

それが超人半沢直樹なのである。

 

しかしその半沢も間違える。

ときに多すぎるお返しをしてしまう。

そんなとき半沢は言う。

「申し訳ございませんでした 」と。

そして知らん顔をして、次の厄介ごとを招く。

いやだ。こんな奴とは友達になりたくない!

 

荒唐無稽な超人半沢に対する悪人も荒唐無稽な極悪人ばかり。

この荒唐無稽同士の暑苦しい戦いが延々と続く。

ある意味、ファンタジーなのだ。

 

半沢は熱い! そしてマスクをしないでツバキを飛ばす!

こんなドラマをコロナの夏にやるな!

 

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(怖い! 顔が怖〜い!)

 

♣ ♣ ♣

こんな暑苦しく、マスクをしない奴が大人気なのは、

それだけ日本にハラスメントが多いことの証明なのだ。

これらの陰湿で暴力的なイジメはコロナ災害で加速され、

弱い立場に置かれている人たちを追い詰めている。

そういう背景が後押しして、半沢人気も加速しているらしい。

 

実際にはできない倍返しを架空の人物に託し、溜飲を下げる。

弱者にはそれでも大きな救いなのだ。

親が子供に倍返しを奨励するようになったら終わりだが、

架空の世界の娯楽として今必要とされている。

我々はそういう世界に住んでいるのだ。

 

半沢直樹は弱者の代わりに理不尽ないじめと戦う戦士だ。

だから半沢直樹の悪口はあまり言わない方がいいのだろう。

でも仕返しをした瞬間、相手の恨みを買うことは間違いない。

特に陰湿なイジメをするタイプは執念深い。

 

己の悪さを棚に上げ、!0年でも20年でもつきまとうに違いない。

いじめを受ける方は諦めても、いじめる側は諦めない。

要は子供なのだが、狙われると厄介だ。

関わりを持たぬよう注意していても、いじめっ子はどこにでもいる。

いじめっ子には、まともな感覚がないので、

何を基準に恨まれるか予測できない。

 

こういう輩に何度か遭遇すると勘が働く。ヤバイなと。

距離を置いて付き合う術を身につけても、ストレスがたまる。

いじめっ子は勝って終わらないと気が済まない。

ケンカは五分五分ということを知らない。

常に弱い相手を負かすことでしか満足できない。

 

そういうとき、覚悟を決めて徹底的にやり返す法がある。

それが半沢直樹の倍返しというわけだ。

 

仕返しというのは中途半端ではダメで、

やるなら覚悟を決めて徹底的にやるしかない。

こちらがボコボコにされるかもしれないがかまわない。

地の果てまでも追い詰め、相手の息の根を止める。

しかしこういう解決法が功を奏することは稀で、

下手すればこちらが加害者になりかねない。

過剰防衛というやつだ。

仕返しというのはどうやっても諸刃の刃でしかないのだ。

 

『負けるから正義なんだ』という言葉がある。

悲しいが、それが現実かもしれない。

 

正しい人間は負けるのだ。

しかしその負ける姿が世界に大きな影響を与える。

世界はそうして少しだけ良い方向へ向かう。

そう信じるしかないのだ。

倍返しをしても、多くの正義は負けるのである。

 

だから私は思う。

半沢くん、倍返しするときは、できればこんな顔で言ってくれと。

 

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(平和が一番だと思うのだ)

 

ネット上にある『半沢直樹』の画像をお借りし、加工させていただきました。感謝♪

 

 

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