岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

動物イラストのお仕事

 

 

このブログでは、あまり自分のことは書かないのですが、

ちょっと毛色の違うお仕事をしたので、

そのことを少し書こうと思います。

 

去年の暮れから1月にかけて、

愛媛県の酒井屋珈琲店の依頼で、商品ラベルのイラストを描きました。

商品はそのお店が独自に販売している素焼きアーモンドです。

これまで使っていたラベルが古くなったので新しくしたいとのこと。

 

どんな絵を求めているのですか?と聞くと

可愛いシマリスのイラストが欲しいのだそうです。

イメージとしては、ディズニーの『チップとデール』のようなキャラを

店独自のブランドにしたいと。

さらに、単なるラベルイラストではなく、物語性が欲しいとのことでした。

 

私は東京に住んでいますので、

東京と愛媛間でメールによる打ち合わせが行われました。

面識のない方の頭の中のイメージをメール文から読み取るのは

これはこれで結構難しいものです。

そもそも他人の頭の中なんて覗けませんから、

とにかく想像力を膨らませてイメージングするしかありません。

 

 

さてどこから取り掛かろうかと…

まず注文の『チップとデール』のようなキャラというところから。

ネットで検索するとたくさん出てきました。

こんなキャラクターです。

 

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(ネット上にあるディズニーの『チップとデール』の画像をお借りしました)

ああそうそう、知ってる。

ドナルドおじさんに何かとちょっかいを出すいたずら者のリスです。

ふ~ん、こんな感じかぁ~ う~ん…

 

ディズニーのキャラはどれも独特のスタイルがあり、

こういう絵を見てしまうと、ここから抜け出すのが大変です。

それほどディズニーキャラというのは、スタイルが完成されています。

だからディズニー風のイメージでと言われると

ディズニーそっくりになってしまい、なかなか描きにくいのです。

 

さて困ったなと…

こういうときは無理に対抗意識を持たない方がいい。

ディズニーと違うスタイルで描くのは簡単ですが、

依頼人はディズニーのイメージを提示してきたわけですから、

絵のベースにはこの『ディズニーらしい可愛さ』が必要なのです。

 

ディズニーに対抗しなくてもいいけど、全く違うものは描けません。

ディズニーらしい可愛さを持ちながら、

珈琲店のオリジナルになるキャラを創るというお仕事です。

さらに『物語性』がどうしても欲しいのだと。

 

なんだよ。よくよく考えると超難しいではないか。

大丈夫か、こんな注文を軽く引き受けて!

しかし今更断れないのであった。

 

★★

こういうときは焦らずに『基本』を守ります。

『基本』とは何かと言えば、実物のスケッチです。

 

注文は『シマリス』ですから、まずシマリスを探しに山に行きます。

山で数匹のシマリスを捕獲するのですが、

野生動物はそう簡単には捕まってくれません。

 

そこで罠を作り、数日テントを張って待ちますと…

2匹ぐらいが罠にかかりますから、獲物を持って家に帰ります。

捕まえたシマリスを部屋に放し飼いにしてスケッチするのですが、

これがなかなかすばしこくて思うように描けません!

 って、ボケが長~い!

どんだけボケれば気が済むんや!

シマリス捕獲せんでもネットで画像検索すればええやん!

 

とうわけで、

ネットでシマリスの画像を集めてプリントアウトします。

それを見ながらスケッチします。

こんな感じです。

 

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シマリスってホントに可愛いです。

ディズニータッチで描かなくても可愛いですね。

こうして出来たキャラクターがこれです。

 

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実物はもっとスマートですが、なぜかコロコロしたリスが描きたかった。

『リップ』と名付けました。男の子です。

 

さてここで筆が止まります。

依頼人はこのイラストに『物語性』が欲しいと言うのです。

そこでこういう提案をしてみました。

絵の中に商品のアーモンドを入れますが、

シマリスがアーモンドを持っているだけでは物語になりません。

キャラクターがもう一つ必要です。

この場合は女の子でしょう。名前は『リッぺ』です。

 

つまり、リップがリッぺにアーモンドをプレゼントしている。

そういうシーンを描きたいがどうでしょうかと。

すると先方は「それで行きましょう!」とゴーサインが出ました。

そこで追加したのが女の子のキャラ『リッぺ』です。

こんな女の子です。

 

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これでキャラクターが出来ました。

次にこのキャラでラベルのイラストを創ります。

 

★★★

観賞用の絵ではなく『商品』ですから、描き方が少し違います。

ただし、『物語を感じさせる絵』にしなければなりません。

試行錯誤した結果、出来上がったスケッチを先方に送ると、

「尻尾を大きく描いて欲しい」という注文がきました。

注文に合わせて描き直した下絵がこれです。

 

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シマリスの男の子が女の子にアーモンド(愛のプレゼント)を贈る

という場面は、

珈琲店がお客さんに心を込めて商品を送るという物語です。

ベタですが、ストレートでわかりやすいのではないかと。

 

ここまで来れば、後は描くだけです。

まずは自作の竹ペンで描いた線画をスキャンし、

パソコンで少しづつ色を塗っていきます。

 

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こうして出来た完成品がこれです。

 

 

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この絵は、素焼きアーモンドの入った袋のラベルと

販売促進用のパンフレットに使われます。

背景のハート形のアーモンドの木の内側には、

商品のコピーが入るはずです。

 

愛媛県の珈琲専門店の商品なので、

私の住む東京では販売されていないでしょうね。

地域限定品だと思いますから。

(マイナーなお仕事やなぁ~)

 

その後連絡を取っていませんが、

アーモンド、売れたのでしょうかね?

 

このブログの読者の方で、

もしこのイラスト付きのアーモンドを見かけた方は、

リップとリッぺに声をかけてやって下さい。

きっと喜ぶと思いますよ♪

 

 

 

 

 

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