岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

リュック・ベッソン映画の集大成♪

 

レオン

 

1994年 フランス/リュック・ベッソン監督作品

満足度 ★★★★★ 劇画ですね

 

 



日本語吹替だがTVで放送したので久しぶりに観た。

やはり面白い。引き込まれる。

ベッソン監督の最高傑作は『ニキータ』と『レオン』だろう。

ベッソン映画の完成形がこの2作だと思う。

グラン・ブルー』あたりはまだ商業用映画というより

ベッソンの個人的な世界という感じの作品だが、

ニキータ』からは完全に観客を意識した作りになっている。

この『レオン』に至っては

もう完全に商業用映画のコツを掴んでいる。

 

わかりやすい。面白い。感動的。

という3つの受ける要素満載の映画である。

 

 

♠︎

ところが残念なことにその後のベッソン監督は、

まるで魔法が解けたかのように下降線をたどる。

ニキータ』と『レオン』を越えられない。

この2作がベッソン映画の頂点だと思う。

 

つまり、早熟の天才だが、才能が枯れるのも早かった♪

この後は脚本を書き、プロデュース作品を連発するも

どうしてもこの2作以上の映画を撮れない。

ベッソンのプロデュース作品はヒットはするが小粒になった。

 

どうしてもカリスマ性のある作品が創れない。

イデアは面白いが、ただそれだけの映画がほとんどだと思う。

 

早く才能が開花したは良いが、

こういう人生もそれはそれで辛いんじゃないのかなと。

人間の才能は早く目が出るとスゴイ! と注目されるが、

別に早ければ良いというものではないだろう。

 

人にはそれぞれ開花する時期があり、

その時期に早いも遅いもないと思う。

それが多様性というものだ。

 

ベッソン監督のように、早く才能が開花して、

早く枯れてしまうというのもどうなのよと思うのである。

若い頃に実績を作った人は、

オリンピックの金メダリストと同じで、

一生金メダリストとして生きていけるが、

体はどんどん衰えていく。

その時点で金メダルを取る力はもうないのだが、

金メダリストという名誉は一生持ち続けられる。

もう死ぬまで金メダリストなのである。

 

ベッソン監督もそんな感じかなぁ。

ニキータ』と『レオン』のベッソンである。

 

だからベッソン監督の勢いが一番あった時の『レオン』は面白い。

注意して観るとずいぶん御都合主義の展開で、

無理のある場面があるのだけど気にならない。

勢いがあるからでしょうね。

不自然さを感じる暇がないほど輝いています。

 

主演のジャン・レノだけでなく、

初々しいナタリー・ポートマンがキュート。

さらに麻薬捜査班のあぶない刑事

ゲイリー・オールドマンがいい♪

 

レオンの友人で殺しの仕事を仕切る男を演じた

ダニー・アイエロさんが一番美味しい役かも?

 

演出法はまさに日本の劇画そのもので

現実的ではなく荒唐無稽なのだが

それがまた自然にできているところが素晴らしい。

 

物語の出だしはジョン・カサベテス監督の傑作映画

『グロリア』を思わせる緊張した場面から始まる。

 

ゲイリー・オールドマン扮する悪徳刑事に

皆殺しにされるマフィア一家の娘マチルダ

隣に住む独身男レオンに助けを求める。

 

そしてこのレオンが凄腕の殺し屋という出来すぎた設定。

そして2人の共同生活が始まる。

レオンの元で殺しの仕事を覚えた少女マチルダは、

弟を殺した悪徳刑事に復讐しようと企むが…

さぁ、どうなるんだろうという映画でハラハラする。

 

 

♠︎♠︎

物語はそれほど深みはなく、娯楽映画の王道だ。

深みはないが、随所に絵になる場面があって楽しめる。

有名なのは下のシーンでしょうね。

このシーンは絵になります。

レオンの孤独と少女の孤独。

それが無言のうちに表現されています。

ここら辺から2人の心が少し通じ合っていく。

お互いにそれをうまく言葉にできない不器用さのようなものを

この2ショットが現していて印象的です。

 

背景がニューヨークなのに

どことなくヨーロッパを感じさせる不思議なシーンです。

ベッソン監督はこのシーンの絵コンテを何度も描きなおして

納得するシーンにしたんでしょうかね。

絵心のある人なら一度は描きたくなる構図です。



ナタリー・ポートマンの首のアクセサリー(黒いチョーカー)と、

ショートカットがよくあって、魅力的なキャラになっています。

この黒いチョーカーは、

『レオン マチルダ チョーカー』という品名で

販売されているんですね。知らなんだ♪



対するレオンは不器用で心優しい殺し屋。

丸型のサングラスに毛糸の帽子。

短めのズボンと無骨な感じを出している。

殺し屋然としていないところがリアルで怖い。

 

 

♠︎♠︎♠︎

最後にもう一つ。この映画の見所、というか聴きどころ♪

それは悪徳刑事たちにマフィア一家が皆殺しにされるシーンに

流れる不穏な音楽です。

この音楽はベッソン監督の指示なのか

音楽監督の感性で作られたものかはわからないが

この不穏な音楽が、ラストの悲劇を暗示しているようで怖い。

 

怖いけど実に良いのですね、この音楽が。

全ての希望を奪ってしまうかのような不穏な音。

その中にほんの僅かな希望を託しているような

観客を何とも言えぬ不安で押し包む。

『レオン』にこの音楽ありです。

お聴き逃しなく!

 

とうわけで、星5つのアクション映画です。

忘れたころに観るとグッときますよ。

お勧めいたします。

 

 

ネット上の『レオン』の画像を参考に、イラストにさせて戴きました

感謝!

 

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