連続殺人鬼カエル男
中山七里 宝島社文庫 ★ エグイ!
宝島社の話題のミステリー『公開処刑人 森のくまさん』を読んだ。
ここで読書レビューを書くのは『面白い本を読んだとき』だけである。
だから『森のくまさん』のレビューは書かない♪
そして別の日、同じ宝島社の『連続殺人鬼カエル男』を読んだ。
正確に言うと、途中から飛ばし読みをしてしまった。
これを作者が知ったら、さぞがっかりするだろう。
なんだ、飛ばし読みかよ!と。
ところで、
飛ばし読みした本のレビューを書くのはフェアだろうか?
フェアじゃないだろう、どう考えても。
ちゃんと読んでないのだから!
しかも、『面白い本を読んだとき』というルールに反する。
面白い本は飛ばし読みなんてしないものだ。
しかし、ルールを破るのは楽しい♪
たまには『面白くない本』のレビューも新鮮味がある♪
というわけで、
何が面白くないのかを上から目線で書こう!
作品をけなすときは上から目線に限る♪
非人道的な行為?だが、中山七里は私より年下なのでかまわない。
七里が中学1年のとき、私は卒業していた!
(そんなんどうでもええ!)
ちなみに、
ここでいう『面白い、つまらない』は私の主観だ。
いくら私がつまらないと叫んでも、
アマゾンレビューでこの作品を絶賛する人は多い。
★
埼玉県飯能市で猟奇殺人事件が起る。
この事件を担当するのが埼玉県警の2人の警官だ。
ベテランの渡瀬刑事と新米の古手川くん。
この2人の刑事が、
グッチャングッチョンにエグイ犯罪に迫る!
果たして、
マスコミがカエル男と名付けた犯人の正体は?
カエル男の狙いは何だ? というお話に
刑法第三十九条がからんでくる♪
いわゆるサイコサスペンスもので、それ自体は新鮮味はない。
新鮮味はないが犯人像や動機がどんなんかな~?という興味がある。
思いっきり驚かせてほしい!
その一点で読み進めていく私であった。
出だしは快調で期待感が高まるが… しばらく読んでいるとあることに気づく。
か… 漢字がやたらに難しい!
読めない!!
読めなくても日常生活に困らないと断言出来る漢字が頻繁に出てくる。
漢字のテストか!
初めは気にならないが、ここまで頻繁だとわずらわしい。
そこで素朴な疑問が浮かぶ。
なぜわざわざ難しい漢字を?と。
巻末に7冊の本が参考文献として載っている。
主に犯罪心理や精神鑑定についての本で、よく勉強したな~!と。
難しい漢字の出典はこれなのか?
読者が読むのは物語であり、文献ではない。
難しい漢字を多用する理由があるはずだが、それが見当たらない。
作品に重厚さを出すというのが一番それらしい理由だが、
この作品はどう読んでもB級エンタメである。
とすれば、これがこの作家のスタイルなのか?
難儀じゃの~!
★★
もうひとつの難儀さは、ムダに細かい描写である。
400ページ近いこの作品だが、明らかに100ページは削除出来る。
ムダに細かいと言うと七里ファンは怒るだろうが(怒れ!)
やはりムダに細かいとしか言い様がない!
それでも250ページ辺りまでは、一字一句丁寧に読んだ。
読んだが、ここでまたふと気づくのである。
いったい私は何を読んでいるのか?と。
これでもかという細かい描写を丁寧に読んでも
一向に読んだ内容が蓄積されない。
知らぬ間に、読書の楽しみが精神的な拷問になっている。
こっちは金払って読んでるんだ!
もっとワクワクさせろよ!と。
次はどうなるんだろう?という興味はあるものの
この苦痛に耐えるほどの価値があるのか。
だから、飛ばし読みにしたのだ。
250ページまで付き合ったのだからいいだろう。
せっかく苦労して書いた作品を飛ばして読むのはスマンと思う。
難しい漢字の多用は勘弁してほしいが、
どんなに細かく書き込もうと、面白いものは面白い!
それが退屈なのだから仕方ない。
中山七里は文章がヘタなのか?
この文体が私に合わないだけなのか?
中山七里の小説はこれ一冊しか読んでないが、
この作品を読む限りでは、ほぼ同時期に書かれた
デビュー作『さよならドビュッシー』を読む気にはなれない。
★★★
次に難儀なのはアイデアである。
この作品は『どんでん返しに次ぐどんでん返し』が売りなのだ。
本読みのプロもひっくり返った衝撃の結末! というのだが…
私は本読みの素人なので、ひっくり返らなかった。
なぜなら、この『どんでん返し』がまたムチャなのだ。
SFだけでなく、ミステリーにも詳しくない私が言うのもなんだが、
こらムチャやん!と。
犯人がわかった時点で、残りが20ページもある。
だから鈍い私でも何かあるなと♪
あったさ、怒濤のでんぐり返しが!
でも、こらムチャやん!
いっそのこと、
最後はSFに変貌するぐらいの離れ業の方がまだ納得出来る。
ムチャでもええ。荒唐無稽でもええ。
面白ければ!
しかし、このどんでん返しは面白くない。
どう面白くないかは、ネタバレになるので書けないが、
ラストの謎解きが、文献を読んでいるように退屈なのだ。
そら、驚いたで~!こんなムチャ、よう考えたなぁ~!と。
けど、面白味がない。
難解な漢字に耐え、細かすぎる描写に耐え、
ムダに長い格闘シーンにも耐えたご褒美がこれかよ! と。
こういう犯罪が実行可能かどうかはどうでもいい。
小説は虚構だから、非現実的でいいのだ。
面白くさえあれば!
犯罪心理学や刑法の知識が物語の邪魔になったのでは?
むしろ、全てを想像で書いた方が面白かったのでは?
詰め込みすぎではないのか?
というのが素直な感想です♪
(飛ばして読んだおのれに何がわかる!)
この本の解説に中山七里のインタビューが載っている。
自分でクリアすべき条件を設定したんです。
一気読みさせる、どんでん返しがある、最後の一行で必ず驚いて戴く。
高い! 志が高い!
あなたは吉田松陰か!
少なくとも本作は、この3要件をクリアしている。
私は一気読み出来なかったが、一気に読んだという読者は少なからずいる。
どんでん返しがあり、最後の一行は「なるほど♪」と思える。
飛ばし読みでも、お話に大きな破綻は感じられなかった。
ただ、
この3要件にこだわりすぎて、どうにも硬く読みづらい。
ワクワクしないのだ。
自ら墓穴を掘ったとは言いたくないが(言ってるが)
どんでん返しは大好きだが(なら誉めろよ!)
心の赴くままに創作する自由さが欲しかった(上から目線や♪)
ちなみに、
私が今まで読んだ小説で、未だにトラウマになっているどんでん返しは
アイラ・レヴィンの『ローズマリーの赤ちゃん』である。
あれほど現実離れした奇想天外なオチも珍しいが
母性愛という一点に心が締めつけられた。
まぁ、私の好みですけど♪
★★ 閑話休題 ★★
読みやすいかどうかは読む人によるのだろう。
私の感想は星ひとつ★だが、アマゾンレビューでは、
読みやすく一気に読んだというレビューが多々ある作品だ。
何よりこの作家は一発屋ではなかったようで、新作を書き続けている。
つまり、実力があるということだ。
いつか、もう一冊ぐらいは読む日が… 来るだろうか?
というわけで…
難しい漢字がお好きな人はどうぞ♪