岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

『いぼ痔』って、どうよ?

 

 

 

『My いぼ痔』のお話

 

私はこう見えて『痔主』である。

どう見えてるか知らないが、いわゆる『いぼ痔』なのだ。

『いぼ痔』というのは、別にお尻にイボができる病気ではなく、

医学用語では『内痔核・外痔核』という。

お尻(肛門)の内側にできるのが『内痔核』で、

外側にできるのが『外痔核』である。

 

肛門の内側(直腸部分)は、

自律神経に支配されているため痛みを感じにくく、

肛門の外側は、脊髄神経に支配されているので痛みを感じる。

つまり『内痔核』は痛みがほとんどなく、

肛門の外側にできる『外痔核』は痛みを伴うという違いがあるが、

共にその正体は血管の束がうっ血して皮膚の下からふくらんだものだ。

これが大きくなり、お尻の外にポコッと出てくると、

イボのように見えるので『いぼ痔』と呼ばれる。

 

内痔核は痛みがなく進行するのでお尻の外に出てくるまではわからない。

小さいうちは排便時に出てきても自然に戻るので気がつかない。

痔という病気で一番多いのがこの『いぼ痔』なのだ。

 

そして私は『いぼ痔』なのだった。嗚呼!

 

 

痔を自覚したのは10年ほど前のこと。

なぜわかったかというと出血があったのだ。

それはまぁキレイな鮮血であった。

痛みはなかったもののそりゃぁ驚いた。

これは一体どうしたことだろうとビビったぜ。

そして「あぁ、これが痔というものなのか?」と、すぐに肛門科へ。

 

痔には1度から4度までの段階があり、

私は2度と3度の間だった。

そしてその頃はまだ一般的ではなかった『硬化療法』が適用された。

これは手術ではなく、注射で痔核を固めて小さくするという治療法で、

当時は保険診療外だったので5万円ぐらいした。

現在は保険診療で1万7千円ぐらいだと思う。

治療時間は30分ほどで日帰りであった。

 

しかし、いくら肛門内は痛みが少ないとはいえ、

あまりいい気持ちのものではない。

注射は全部で4箇所に打つのだが、鈍痛のようなものがあり、

何度も受けたいと思うようなものではなかった。

 

現在は麻酔や注射の技術も進歩しているので

私の10年前の体験は参考にならないと思うのだが、

その時の記憶があまりに鮮明に残っていて、

「2度とあの注射はしたくない!」と思っていた。

 

そんな矢先に、出た!

My いぼ痔が再発したのだ!

原因はコロナによる巣籠もり生活だろうと思う。

コロナ禍の生活で、週に2~3回行っていたウォーキングがゼロに。

とにかく動かなくなった。買い物も週に1回だけ。

ほぼ1日中、机に向かう生活が1年以上続いた。

 

そして冬の到来とともに、血流がどんどん悪くなったのだろう。

運動不足が限界を超え、出てきてしまった!

 

ところがである。

今回は前回とは違うのである。

トイレで排便時に顔を出すぐらいなら指で優しく押し戻せば済むのだが、

今回は… 歩くだけで顔を出すのだ、My いぼ痔が!

 

これは困る。

以前もたま~に歩行中(特に冬場のウォーキング時)に顔出しはあった。

しかしズボンの上から指で押せば元に戻ったのだが、

今回は、戻らない!

 

とにかく急いで家に帰り、ウォシュレットで温めてから

指で優しく押し戻さなければならない。

それも押し込むのに時間がかかるのである。

つまりそれだけ痔核が炎症を起こして腫れているのだ。

 

焦った!

これでは外出できないではないか!

外出中にポコッと出てきたらどうしようと。

夜も眠れなくなったのである。

ここから『My いぼ痔』との長い戦いが始まった!

時は2021年1月のことである。

 

♣ 

痔という病気は生活習慣病のひとつで、

国民の3人に1人がお尻に何らかの違和感を感じているという。

つまり虫歯と同じようなものであるが、

「ちょっと歯医者に行ってきま~す!」とは言えても、

「ちょっと肛門科に行ってきま~す!」と笑顔で言える人はまずいない。

理由は簡単。恥ずかしい。特に女性は! キャッ!

 

ある統計によると、お尻に違和感を感じてから、

肛門科を受診するまでの期間は平均して7年だそうだ。

つまりそれだけ肛門科という場所は行きずらいのである。

 

何をされるのだろう?

生きなり手術と言われたらどうしよう!

絶対に痛いに決まってる!

診察時に恥ずかしいポーズをとらされたら生きていけない!

やめよう! 絶対に行くもんか、肛門科なんて!

 

こうして市販薬でごまかしているうちに痔は悪化し、

「先生助けて~!」となるまで平均して7年だと。

わかる。私にはよ~くわかる。

 

しかしここに誤解と思い込みがある。

痔は自然に治ることはない。

また、自己流で治そうというのも危険である。

お尻に違和感を感じるイコール『痔』とは限らない。

肛門とは、わずか1.5センチから2センチほどの部分で、

その先は直腸である。

痔だと思い市販薬を使っていたら、腸の病気だったという例もある。

それほど自己判断は危険なのである。

まず肛門の専門医に診察してもらい、

先生と二人三脚で治していくのが正解なのだ。

 

痔は症状が軽ければ軟膏でほぼ完治するという。

いぼ痔で手術する例はごくわずかで、今はほとんど手術はしない。

ではどうするかというと、

薬と生活習慣の改善。この2つで症状を和らげるのである。

 

痔は命に関わる病気ではないので、

日常生活の妨げにならなければ問題ない。

私だって痔主のままなのだから。

痔の治療のメインは、日常生活に支障が出ない程度まで

症状を和らげるというものである。

 

出血や痛みをなくし、炎症を抑えるだけで楽になる。

そのためには患部だけ治してもダメで、

生活習慣を見直し、体全体を健康にする必要がある。

この方法の難点は時間がかかるということだが、

成功すればまず再発はしないと思う。

痔が良くなれば、体全体が健康になるからだ。

手っ取り早いのが日帰り手術だが、

生活習慣を改めない限り、何年後かに再発する可能性がある。

 

手術はしない。注射もしない。

注入軟膏と生活習慣の改善だけで痔と共存する道を選ぶべし。

 

私は決めた!

2度と注射なんかするものか!

手術だってしないぞ! してたまるか!

だらけた生活習慣を改善し、塗り薬と努力で痔を改善してやる!

 

私はそう決心し、一路肛門科へ向かった。

2021年1月28日のことである。

 

 

♣ ♣ 

肛門科を受診したことのない人は、大きな不安を抱えている。

それは『何をされるのだろう?』という不安に尽きる。

何をされるって、そりゃあ病院だもの、診察である。

ではどんな診察を行うのか? 私の体験談を記す。

 

まずは問診であるが、これは問診票に記入するだけ。

そして呼ばれたら診察室へ行く。

この時、名前では呼ばず、受付番号で呼んでくれます。

患者のプライバシーに配慮しているからです。

 

問診票に基づき先生から色々聞かれるので、

正直に答えてください。正直に!

そして診察ですが、まずは触診です。

 

お尻に滑りを良くするゼリーを塗ります。

肛門の専門医院では、このゼリーに麻酔が含まれているそうです。

私が受診したクリニックは、肛門の専門医院ではなく、

内科、小児科、消化器科、肛門科を

1人の先生が兼任している医院だったので、麻酔入りゼリーではなかった。

 

さて、あまり気持ちのいいものではないが、お尻に指を突っ込まれます。

麻酔なしでも痛いというほどのことはなかった。

触診では痔核の大きさ、硬さなどを指で触って調べます。

 

その次は、肛門鏡という特殊な内視鏡を肛門に入れて患部を見ます。

痔核の大きさ、腫れ具合、直腸の様子、肛門が狭くなっていないかなど

肉眼で丁寧に調べます。

 

診察は以上で終わりですが、

初心者が一番知りたいことは、診察時のポーズだと思う。

下半身スッポンポンで恥ずかしい格好をさせられるのではないかと。

 

そんなことはありません。

お尻を見せなければ診察できないので、お尻は見せます。

でも下着を全部脱ぐ必要はなく、お尻が見えるだけ下げればいいのです。

その時の格好もシムス体位という横向きが主流です。

 

下着を下げている間は、看護師さんがバスタオルで隠してくれますし、

先生とは反対の方を向いて横になるので、

先生と顔を合わせることはありません。

診察が終わると看護師さんがお尻をきれいに拭いてくれます。

実際、恥ずかしさはほとんどありません。大丈夫です。

 

 

♣ ♣  

診察が終わると、先生から痔の状態の説明があり、

どのような治療が適切かを提案される。

この時に、「注射も手術もしたくない!」とハッキリ言うこと。

軟膏と生活習慣の改善で症状を和らげたいので、

セルフケアのアドバイスをお願いしますと伝えます。

 

「いやキミねぇ、手術だよ!」といきなり言われたら

別の病院を探したほうがいい。

そのためにも肛門の専門クリニックを受診すること。

肛門の専門医はいきなり手術とは言いません。

まず3ヶ月の生活習慣の改善を提案してくれるはず。

それでも改善されない時には、他の方法を相談するといい。

 

繰り返すが重症でない限り、今はいぼ痔では手術はしない。

そのためにも、お尻に違和感を感じたら

迷わず肛門の専門クリニックに直行するべし!

早ければ早いほど治療は楽ですから。

 

さて、私の主治医は私の希望通りの治療をしてくれました。

注入軟膏の処方箋と生活習慣の改善アドバイスである。

 

「とにかく歩きなさい。座りっぱなしはダメです」

「軟膏は毎日風呂上がりに付けること」

「4週間後にまた来てください」

 

これが私の最初の『いぼ痔』治療法である。

 

こうして今年の1月28日から『いぼ痔』の治療を開始した。

いぼ痔というのは簡単には治ってくれない。

そこで心の支えとなる本を2冊購入した。

 

草間香著『痔の悩みが解決する本 安心ハンドブック』IDP出版 1,400円

平田雅彦著『自分で痔を治す方法』アチーブメント出版 1,300円

 

いずれの本も

痔の原因、痔の種類、最新の治療法、セルフケアの方法、食事法

などについて詳しく書かれている。

特に草間先生の本には、診察の手順がわかりやすく書かれているので、

肛門科が初めての人は安心感を得られると思う。

ちなみに草間先生は女医さんで東京青山にクリニックがある。

肛門科は抵抗があるという女性は、

草間かほるクリニックを受診されてはいかがだろうか。

 

私はこの2冊の本を読み、心の支えにして治療に励んだ。

まず炎症が収まるまで2ヶ月はかかると書かれている。

「2ヶ月かぁ… 長いなぁ~」とは思ったが

とにかくやるしかないのだった。

 

 

♣ ♣  ♣ 

まず歩くことから始めた。

毎日5,000歩は無理だが、2,000~3,000歩を目標にした。

それも一度に長い距離を歩こうとすると挫折するので、

こまめに歩くことにした。

 

百均でキッチンタイマーを買い、60分にセットする。

仕事中はタイマーがピピッと鳴ると立ち上がり、

2階の仕事場から1階の集合ポストまで階段を降り、

深呼吸をして回れ右。2階の仕事場へ戻る。

歩数にして70歩ほどだが、これだけでもお尻のうっ血予防になる。

仕事中に立ち上がるのが面倒な時は、
時々4〜5センチほど腰を浮かせるだけでもうっ血を防げる。

 

さらに1~2時間仕事をすると、

今度は家の周りをグルッと歩いてくるのだ。

歩数にして300~400歩、時間は4~5分だと思う。

 

こういう運動をちょこちょこ行う。

チリも積もれば山になるというわけで、

1日が終わる頃には3,000歩ほどになっている。

疲れがあるときは無理して長い距離は歩かない。

10mでも20mでもいいから、とにかくマメに歩く!

 

さらに水を毎日1リットル飲む。もちろん少しずつだ。

野菜を毎日食べる。

排便時にいきまない。便座に座る時間は3分まで。

便意がなくなったらすぐにトイレを出る。

1日数回肛門体操(お尻をキュッと締めては緩める)を行う。

疲れているときは早く寝る。

 

これらを1ヶ月続けた結果どうなったかというと… 変化なし。

まあね… 1ヶ月じゃこんなもんでしょ、と余裕である

 

1ヶ月後に2回目の肛門科の診察を終え、新たな気分で頑張る。

しかし、しかしである。なかなか良くならない。

お尻が非常に不安定で、居心地が悪い。

1ヶ月半経っても改善の兆しが見えない。ちょっと落ち込む。

これ本当に治るんかい? 一生このままなのでは?

いろんな疑念が湧き上がり不安になったが、

ダメならダメで、注射を打てばいいじゃないか。

そう覚悟を決め、気を取りなおす。

 

2ヶ月を過ぎた頃から、朝はどんなに歩いても平気になった

お尻がキュッとしまってる実感がある。

しかし排便がどうしてもスムーズにいかない。

便は柔らかいのだが出るまでに時間がかかるのだ。

だからどうしても少し息んでしまう。

すると途端にお尻が不安定になり、

痔核が飛び出してきそうな不快感が現れる。

実際、排便後に少しでも歩くとポコッと出てくるのだ。

 

これじゃぁ、トイレの後は外出できないじゃないか。

目の前が真っ暗になったが、とにかく歩いた。

もうね、頑張って歩いた。

 

すると緊急事態が!

私は左膝に爆弾を抱えている。軟骨がすり減っているのだ。

整形で治療を受け、今は症状は治っている。

ところが毎日頑張って歩いたことにより、再発した!

膝が痛くなり歩けなくなったのだ。焦った。

湿布薬を買いしばらく安静に過ごす。

膝が楽な時に少しだけ歩く。

でも歩くと膝が痛くなり歩けない。

 

何だよ~ これじゃぁいつまでも治らないじゃないか~!

もうどうしていいかわからない。

いやイカン! ヤケになってはダメだ。冷静に落ち着いて。

とにかく、少しずつでも歩こう。

 

やがて膝の痛みも収まり、元のペースに戻る。

朝はとても調子がいい。問題は排便のコントロールだ。

焦らず息まず、ゆっくりゆっくり。

そして3ヶ月が経つ頃には、息まなくても排便できる日が増えてきた。

排便後は不安定だが、歩いても脱肛しない日もある。

少し希望が見えてきた♪

 

そして5月。排便が楽にできるようになった。ワオ!

排便後に歩いても痔核が出てこない! ワオ!

ただ、疲れのある時に無理に歩くと帰宅後に少し腫れることがある。

しかし、1月に比べれば格段に良くなっている。

痔核も気持ち小さくなっているように感じる。

 

5月7日に4回目の診察を受ける。

「痔核が小さくなってます。もう通院しなくて大丈夫でしょう。

少し様子を見て、悪くなるようなら来てください」

念のため1ヶ月分の軟膏をもらい意気揚々と帰宅した。

 

現在、軟膏は1日おきにつけている。

そして体調がいい!

 

本に書いてあった通り、痔だけを治してもダメなのだ。

生活習慣を改善し、体全体をよくしなければいけないのである。

私の治療はまだ続いているが調子はいい。

再発しないように毎日少しづつこまめに歩いている。

お尻を気にせず歩けることが

こんなにも気持ちのいいものとは知らなんだ。

 

というわけで、以上が私の痔の治療の顛末である。

あくまで私個人の体験記なので、万人共通ではないと思うが、

痔で最も多い『いぼ痔』で苦しんでいる方は、

この記事を参考にして治療に励んでいただきたい。

 

くれぐれも自己判断はしないこと。

痔の治療の第一歩は肛門科の受診です。

そこがすべてのスタート!

一にも二にもまず受診することだと思います。

 

 

 

岩井田治行コミックス ★ にほんブログ村/にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ