岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

画家って、失敗から何を学んで、どう立ち直るの?

 

失敗って、どうよ?
 

 

 

誰だって失敗はしたくない。

シンドイし、カッコ悪いし、自信を失うし…

とにかく苦痛です。

 

それでも失敗からしか学べないことがある。

学ぶために人類は失敗を繰り返してきた。

自分だけ無傷で済まそうとしても無駄なのだ。

 

だから失敗を恐れない。

そういう心境にならないと進歩はない。

なんか偉そうなこと言ってますが

 

 

では、失敗の過程をご覧ください

 

前回『レオン』のマチルダを描きました。

2枚描いたうちの1枚目ですが、2回描き直しています。

つまり2回失敗しているんです。

その失敗作をお見せいたします。恥ずかしいですが♪

 

まずこれが参考写真です。

⬇︎


ネットで探しましたが、なかなかいい写真でしょ?

泣き笑いと言うんでしょうか、微妙な表情がよく出ています。

映画の中ではほんの一瞬の表情です。

ところがこれを描こうとすると描けないんですよ。

どうしてもこの泣き笑いの感じが出ない。

 

で、最初に描いた絵がこれです。

⬇︎

 

出来上がった作品を見て、ああだこうだと言うは易しですが、

描いている方は必死なわけです

 

この絵のどこがダメなのか?

まず鼻が長いんじゃないかと思います。

その下の唇も変です。

参考写真に似てないのは構わない。肖像画じゃないから。

気に入らないのは『泣き笑い』の表情が出ていないことです。

泣くのか笑うのか表情の方向がはっきりしません。

なんか中途半端に感じるんです。

 

ついさっきまで絶望していたマチルダ

一瞬にして希望を抱く。その一瞬の泣き笑いです。

口で言うのは簡単ですが難しいですよ。

ここで気付くのが、ナタリー・ポートマンの個性的な顔です。

 

よ~く見ると両眼が離れています。

鼻はギリシャ彫刻のように凛々しい。

その下の唇は意外と大きく下唇が厚いんですね。

 

それに泣き腫らした目尻の赤み。

今にもまた泣き出しそうな、それをぐっと我慢して笑っている。

そういう表情がこの顔に凝縮されています。

 

複合的な要素満載で一筋縄では描けない。

泣き顔を描こうとすると笑った感じが出ないし、

笑った感じを強調すると泣き腫らした感じにならない。

どっちやねん! という感じの顔なんです。

で、描き直すことにしました。

それがこれです。

⬇︎

 

1枚目より感じは出てきましたが… なんか違和感がある。

ここで筆が止まりました。

 

どうしていいかわからない。ギブアップです。

2日ほど間を空けて考えました。

描きこみすぎではないだろうかと。

 

考えて考えて、ハッと気づいたんです。

そうだ、やはり描きこみ過ぎなんだと。

 

手数をずっと減らしたらどうなるだろう?

完璧に仕上げるのではなく、途中で止める。

それぐらいのいい加減さで描いたらどうなるだろうと。

 

そして3回目に描き直したのがこの完成作です。

⬇︎

 

時間にして約15分ほどだったと思います。早かった。

ひと塗り目で表情を捉えていたので、これ以上は描き込まなくていい。

そう判断しました。

表情が描けたので背景や服は省略しました。

細部を少し付け足した程度で完成です。

 

3枚描いた中でこれがやはり一番いいと思う。

参考写真とソックリではないのですが、感じがつかめてます。

ああ、描けた! 諦めなくてよかった!

そう思えた瞬間でした。

 

3枚描くのに要した時間は約1週間です。

原画の日付は1月5日になっていますがこれは完成した日です。

1枚目の原画をその上から塗り直しているので、

つまり同じ原画を2回いじり回しているのです。

仕上げは15分ですから、失敗している時間の方が長かった。

その1週間、ずっと苦痛でした。

 

これが逆ならいいのにといつも思います。

失敗している時間が15分で、そのあと1週間ずっと成功し続ける

これなら気分もいいし長続きしそうじゃないですか。

 

ところがダメなんです。

楽な道からは学ぶことがあまりない。

シンドイ経験からしか多くを学べません。

なんだか知らんけど、そういうシステムなんですね、人生は。

 

プロの仕事はみんなそうですが、表に出ない失敗があります。

役者さんなどもそうですね。NGというのは表に出ません。

何十カットも撮って全部ボツとか♪

NGシーンでも流さない限り観客にはわからない。

 

ブルース・リーの遺作『死亡遊戯』のNGシーンがYouTubeにあります。

あの華麗なヌンチャクさばき。

実は何度も撮り直している。ブルース・リーですらそうです。

それがプロなんですね。

 

このマチルダの絵も失敗作を公開しなければ、

全部で3枚描いていることは誰にもわかりません。

3枚というのは少ない方です。

10枚ぐらい描きなおすこともありますから。

 

仕事というのは目に見えているものだけじゃなくて、

後ろで支えているものがたくさんあるんです。

 

これが仕事ならお金になるのは3枚目の絵だけです。

その前の2枚のマチルダは一銭のお金にもなりません。

ただの紙ゴミですが、その失敗の過程が必要なんです。

 

この絵の場合、1枚の絵のためにその3倍の労力が払われています。

一発で描けることもありますが、だいたい2~3倍の陰の力があります。

 

1枚絵を描くために1枚描いていてはダメなんです。

とにかくたくさん描き、たくさん失敗する。

そして失敗の過程は隠されるのが普通です。

簡単そうに見えますが、プロの仕事に失敗はつきものです。

 

だから大事なのは苦痛でも諦めないこと。それだけです。

根性とかそういうんじゃなく、ただ諦めない。食らいつく。

諦めたら終わりなんです。

終わりにしてもいいと思えない限り、食らいつくしかない。

 

失敗から立ち直るには諦めないことです。

絵を描くことでの失敗は山のようにあります。

これはほんの一例です。

参考になりますか?

 

 

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