岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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えっ! 忌野清志郎の新曲?♪

Baby#1

忌野清志郎 EMIミュージックジャパン ★★★★★ 最高~!

 

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さて、何気にAmazonサーフィンなどをしておりますと、

何だか凄いものを見つけてしまいました!

何が凄いかって、あの忌野清志郎の新曲CDが存在するのであった。

えっ! 新曲って何~!とまずは驚こう。

 

発売は2010年だから、もう9年も前のCDだ。知らなかった!

これがなぜ新曲かと言うと、未発表アルバムだからだ。

1989年にLAで録音された清志郎さんのソロアルバム。

ほとんど完成間近にもかかわらず未発表のままだったって、スゴイね!

 

未発表と言っても10曲の収録曲はすべて発表されている。

このCDが未発表だったため、全ての曲が別のアルバムに再録されたのだ。

私が聴いていたのはその再録曲だったことを初めて知った!

つまり、このアルバムに収録されている曲がオリジナル。

そういう意味での未発表曲ということなのだが…

驚くのは、

アルバムタイトルの『Baby#1』が、本物の未発表曲なのである。

今まで誰も聴いた事のない忌野清志郎の新曲なのだ。

 

何ともどえらいものを遺していたんですね。

今さら知って驚いては本当のファンとは言えないが

とにかく買うしかない。で、買った! 聴いた! 驚いた!

スゴイよ、このアルバムは!!

 

01.『I like you』 02.『ヒロイン』

まずは1曲目と2曲目。

RCサクセションの最後のアルバム『Baby a Go Go』に再録された曲。

でもこちらが正真正銘のオリジナルバージョンだ。

どうちがうのだろうって、全く別の曲に聴こえるから不思議~♪

『Baby a Go Go』RCサクセション最後のアルバムらしく、

ジャケットに映るメンバーも3人という寂しさ。

『あふれる熱い涙』『空がまた暗くなる』などの名曲も含まれるが

どこか淋しさが漂うアルバムである。

 

そのアルバムの1・2曲目に再録された曲のオリジナルだが

何とも柔らかく幸せに満ちている。これが同じ曲とは思えない。

詳しくは知らないのだが、

清志郎さんは結婚し、2人の子どもに恵まれた時期らしい。

先に女の子、続いて男の子だそうだ。

反骨精神の塊のような清志郎さんだが、もの凄い子煩悩だったと聞く。

特に2番目の男の子が生まれた時は大喜びだったとか。

このアルバム制作時はそういう時期に重なるようだ。

『I like you』『you』は子どもたちのことだろうか?

ありのままで十分という飾り気のないシンプルな詩がいい。

 

♪おりこうさんには ならないで

 ムズカシイことは言わないで

 そのままで最高の君さ

 なんにも飾らなくていいさ♪

 

2曲目の『ヒロイン』も娘さんのことを歌っているような♪

 

♪僕のこと忘れないでおくれ お願い

 Ah もうすぐ飛行機で帰るから Oh 家に♪

 

何とも楽し気なレコーディング風景が目に浮かぶ。

子どもたちの待つ家に早く帰りたいと歌っているのだろうか♪

 

03.『恩赦』

木村克也&ザ・ナンバーワンバンドに提供された曲とか。

こういう曲を書かせたら清志郎さんの右に出る者はいないだろう。

 

♪新しい時代が 始まったから

 犯罪者たちに 恩赦がある

 Woh Woh 罪深い俺にも どうぞ

 恩赦 恩赦 恩赦 On my mind

 恩赦 for me ♪

 

古い時代が終わったなら、全ての人に恩赦があるのさと歌う。

ちょっと意味深な歌詞が心に残る名曲。

 

04.『Baby#1』

さてこれが奇蹟の未発表曲! つまり忌野清志郎の新曲である。

このアルバムの中で1、2を争う名品だ。

と同時に、清志郎さんの子煩悩ぶりが発揮された逸品でもある。

息子のことを歌った曲らしいが、

何という親バカぶりだろうと微笑ましくなること請け合いだ。

本当に嬉しかったんだろうなと♪

男の子の誕生をこれほど素直に喜ぶ親も幸せだと思う。

 

♪なんて素敵な夜だろう いつも夢見てたことさ

 あぁ この胸に 君を抱けるなんて

 ぼくは 世界のナンバーワン♪

 

 

♪たとえ夜空が 引き裂かれても 恐くないさ 気にしないさ

 だって ぼくを 悩ませるのは いつも 君ひとりさ♪

 

夜空が引き裂かれても、月が落ちて壊れても構わない、気にしない。

今ぼくが抱いている息子に比べれば、そんなもの大したことじゃない。

ぼくは空や月より もっと大きなものを抱きしめてるから。

シンプルだけど心に響く、何とも感動的な詩である。

こういうわかりやすい言葉で自分の気持ちを伝えられたらいいなぁと♪

詩が書けない私は思うのだ。

 

05.『Young Blue』06.『ニュースを知りたい』

『Young Blue』は、1991年発売の『日本の人』に再録された曲。

細野晴臣坂本冬美と制作したアルバムで坂本冬美がヴォーカルを担当し、

さらに曲名が『Young Bee』と変更されていた。

その曲のオリジナルバージョンが『Young Blue』だ。

 

♪俺の名前は Young Blue みんなが俺を そう呼ぶ

 やってやるぜ Young Blue また問題が 持ち上がる♪

 

『Young Blue』だから、直訳すれば『若くて 青い』かな?

俺はデタラメな世の中になんか従わない。反抗してやるぜ!

清志郎節炸裂のブルースに痺れる。

この曲が2年後に坂本冬美のヴォーカルで再録されたときは

演歌調の何ともコミカルな曲に変更されていた。

やはり本人の歌うオリジナルバージョンの方がいいな♪

 

『ニュースを知りたい』

筑紫哲也NEWS23』のエンディング曲に起用された有名な曲だが、

この曲にもオリジナルが存在していたとは知らなかった。

まるでおとぎの国の音楽のような出だしから始まるオリジナルは、

再録されたものより完成度が今ひとつだが、何とも魅力的。

完成された曲より伸びやかなメロディでこっちの方がいいかも♪

この曲を初めて聴いたとき

♪聞かせておくれ 目立たないような

 ちいさな事件が 重なる訳を♪

という歌詞にドキッ!としたことを覚えている。

わかりやすい短い言葉で本質を突く表現力に脱帽したものだ。

 

07.『KI・MA・GU・RE』

沢田研二さんに提供された曲らしいが、これが本人バージョン。

このアルバムの中で一番カッコイイロックンロールだ。

清志郎さんは普段はとてもシャイな方だったが

歌い始めると人格がガラリと変わる。

あの細い体のどこにこのパワーがあるのだろうと思えるほどの迫力だ。

本当にカッコイイ!

 

08.『Like a Dream』

このアルバムの中で唯一泣ける曲。

 

夢のようなことばかりしてきた 僕なのさ

 My Honey そう 信じて♪

 

♪夢のようなことを きっと あきらめないで

 My Honey Oh 信じて♪

 その夢を♪

 

私はこの世を去るとき、葬儀とか面倒なことはしてほしくない。

できるだけ迷惑をかけたくないので。

でも、もしお別れ会をしてくれるなら、この曲をかけてほしいなと。

 

09.『ラッキーボーイ』

アルバム中で一番元気が出る曲。一番好きかも♪

『Baby#1』と同じく、息子さんに向かって歌ってるような♪

清志郎さんの子煩悩ぶり、親の愛に溢れた名曲。

これも歌詞がいい♪

 

♪ほら大丈夫 平気平気

 ちょっとやそっとじゃ へこたれない

 痛いの痛いの 飛んでけ♪

 転んでベソかいて 日が暮れて♪

 

♪ だけど Lucky Boy 本当は運がいいのさ

 今日はちょっと ついてないだけさ♪

♪ あぁ Lucky Boy いつかわかるだろう

 Luckyな風 おまえに吹いてる♪

 (中略)

♪ 強い子男の子 Oh 立派立派

 早く大きくなって さぁ旅立て♪

 

人生はうまくいかない。辛いことの方が多い。

でも本当は自分は運がいいのだ。

へこたれさえしなければ、いい風が吹いて来る。

おまえはそう生まれついているんだから。

 

親からこんなエールを貰ったら、子どもは喜ぶだろうな。

今落ち込んでいる全国の小学生に聴かせてあげたい。

私もこの曲を聴くと元気になれる♪ いい曲です。

 

10.『メルトダウン

RCサクセション『カバーズ』に収録された

サマータイム・ブルースと同じ、原発を歌ったものだろう。

後にリテイクされた曲とあまり変わらないように聴こえる。

 

♪ 恐ろしい事が起ってしまった

 もう だめだ 助けられない もう遅い

 科学の力を 信じていたのに♪

 

本当にそうなってしまった。

今ならこの次をどう歌にするのだろう?

このアルバムは全体が明るく幸福感に満ちあふれているが、

この曲だけやりきれないほどの悲壮感が漂う。

 

このアルバムは本当に掘り出し物!

忌野清志郎の人生が最も輝いていた時期の作品かもしれない。

若い頃は何だか得体の知れないところがあった清志郎さんだが、

晩年(と言っても50代)の清志郎さんは仏様のような顔をしていた。

不遇を乗り越え、世間と戦ってきた者が持つ穏やかさに満ちていた。

 

この世界には死んで思い知らされる人が少なからずいるが

ロックンローラー忌野清志郎もその一人だ。

今さらながら、本当にもったいない。

 

オッサンの私には聴き取れない歌詞が増えている昨今、

清志郎さんの創る曲はどの曲も聴きやすい。

奇を衒った表現がなくわかりやすい。

短く的確な言葉の繰り返しで心に迫る。

こういう作詞家も今はもう絶滅危惧種となってしまった。

 

『Baby#1』は、何度も繰り返し聴きたい名アルバムだと思う。

 

 

 

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