岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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大傑作『猿の惑星』♪

 

 

猿の惑星

PLANET OF THE APES

1968年 アメリカ/フランクリン・J・シャフナー監督作品

★★★★★ 大傑作!

 

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3978年の未来世界は、一体どうなっているのだろう?

地球には、ドラえもんがいるのだろうか?

アトムの子孫たちは、どうしているのだろう?

 

主人公のテイラー(チャールトン・ヘストン)は、どうも人間嫌いらしく、

『20世紀の人類には興味がない!』と宇宙探検に志願する。

『宇宙には、人類より優れた生物がいる』というのが、テイラーの夢だ。

その優れた生物は必ずや我々の福音となるという信念。

テイラーはそこに自分の人生を賭けるのである。

地球から320光年も離れるなんて、恐怖以外の何ものでもないのに…

 

テイラーの他にも3人の宇宙飛行士がこのプロジェクトに参加した。

当然、片道切符だ。生きて家族には会えないと承知している。

それを覚悟で、未知の彼方まで行くほどのものを彼らは持っていた。

それがロマンなのか、厭世観なのか、科学的好奇心なのかは知らない。

 

やがて彼らは、旅の果てに待ち受ける悪夢に愕然とする。

 

 

この作品をリアルタイムで観た時は、本当に映画のマジックに酔った。

映画館を出てからも、テイラーたちが体験した悪夢が頭から離れない。

フィクションとわかっていても、空恐ろしかった。

それだけこの作品がよく創られていたということだろう。怖かった!

 

何が怖いって、まず音楽。

ジェリー・ゴールドスミスの音楽のマジック!

この音楽というか、効果音というか、本当に怖い。

これだけ架空の世界に観客を引き込む力を持った映画音楽は稀だ。

観客は、まずこの音楽によって、いきなりこの世界の住人にさせられる。

 

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地球では2000年の時が流れた3978年11月25日。

未知の惑星に不時着したテイラーたちは、不毛の地を延々と歩き続ける。

リアルタイムで観たとき、このシーンの孤独感に打ちのめされた。

 

 

次に怖いのが、メインとなる人間と猿が逆転した世界の描写。

宇宙飛行士になるぐらいだから、テイラーたちはエリートだ。

知力体力に優れた選ばれた人類なのだ。

そのエリートが、人間として扱われない。

動物として虐待され、手も足も出ない。これは怖い。何たる屈辱!

 

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文字通りの人間狩り。

この映像を初めて観たときのショックは今でも忘れられない。

 

 

人間と猿が逆転した世界をこうした映像で観せられるとは思わなかった。

猿が高度な進化を遂げれば、その形態はもっと別のものになるだろうが、

『猿そのもの』として進化しているところが怖い!

こういうところは映画的なウソなので、ツッコんではいけない♪

しかしこの猿のメイクが驚くほどよく出来ている。

特にジーラ博士の愛らしさが忘れられない。

 

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今観てもユニークなアナログメイキャップ。

特殊なラバーを眼・鼻・口ごとに分けて付けるという画期的なアイデア

演じる人間の表情に合わせてメイクが動くので生々しい存在感が出る。

こういう手作りの技術にCGは勝てないのだ。

 

 

ゴリラたちによる人間狩りで、テイラーはのどを負傷する。

このためテイラーは一時的に言葉を話せなくなる。

この惑星では、猿が言葉を話し、人間は言葉を話せない。

言葉さえ話せれば証明できる人間の知能。

物語前半で主人公はこの能力を取り上げられてしまう。

そして下等動物として檻の中へ。

 

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これらのシーンは今観てもショッキングだ。悪夢としか言いようがない。

CGなど使わずに、これだけ強烈なシーンを創りあげた先人の発想力に脱帽する。

 

 

自らの知能を猿ごときに証明できない屈辱。

この映画は、人間の持つ自尊心・優越感を踏みにじる。

『それはないだろう! 人間を何だと思ってるんだ!』

と観客をイライラさせる上手い脚本である。

 

動物愛護の気持ちを持つ心優しい人たちでさえ、

『人間は万物の霊長ではない!』という謙虚な心の持ち主でさえ、

テイラーたちを虐待する猿どもには腹が立つようになる。

他の動物に対する人間の優越感をあぶり出す脚本が、本当に恐ろしい!

ここはテイラーになりきって、大いにこの屈辱を楽しみたい♪

 

『どうして人間と猿が逆転した?』と叫ぶテイラーの言葉には

猿より人間が上位に位置すべきという優越感から来る屈辱がある。

観客が感じるこの屈辱感こそが、他に類を見ないこの作品のユニークさだ。

ラストの衝撃は、観客がどれだけこの屈辱を味わったかに比例する。

 

さらに怖いのは、伏線となるミステリーだ。

テイラーの味方となるコーネリアスというチンパンジーが、

禁断地区で発見したある物に基づく仮説。

 

『猿たち以前に、優れた別の文明があったのではないか?』

 

この説が異端とされるのはなぜ?

科学庁長官ゼイウスが、異常なほどテイラーを恐れるのはなぜ?

 

観客はテイラーと共に、猿たちの屈辱的な行為に耐え続ける。

『下等な猿どもに、これ以上虐待されるのはもうたくさん!』と、

観客の不快感が頂点に達したとき、遂にテイラーは自由を手にする!

しかしゼイウスは、禁断地区の奥へと向かうテイラーをなぜか追わない。

 

自由にはなったものの…

猿が支配する星で、テイラーはどう生きて行くつもりなのか?

猿の惑星とは、一体何なのか?

この物語は、どういう結末を迎えるのか?

ここまで観て来ても、観客はまだこの映画の結末を想像出来ない。

そして観客がテイラーと共に、さらに禁断地区の奥深くへ入って行くと…

 

 

ミステリーゾーン』の生みの親ロッド・サーリングの脚本参加により、

世紀の大傑作SFになったことは間違いない。

終末、滅亡というテーマはSFには古くからあるが、

これだけシンプルで、衝撃に満ちた結末を持つSF映画は他にない!

 

地球にとって人類という種は、果たして本当に必要なのか?

原子力エネルギーの恩恵をうける道を選んだ人類の選択は正しいのか?

テイラーが体験した悪夢は、映画の中だけのものなのか?

 

 

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温暖化が地球に危機的な状況をもたらそうとしている今、

改めてこういう作品を観返す時なのかもしれない。

面白い♪ そして怖い! 怖くて今夜は眠れない!!

 

ネット上の猿の惑星の画像を流用・加工させて戴きしました 感謝!

 

 

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