岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

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『モスラ対ゴジラ』という映画♪

モスラ対ゴジラ

1964年日本/本多猪四郎監督作品

★★★★★ 今観ても感動する!

  

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子どもの頃に観た映画で、今観ても面白い映画はめったにない。

この作品は、そのめったにない作品のひとつである。

何度観返しても、よく出来てるなァ~と感心する。

とにかく シナリオが面白いのだ!

モスラは卵から幼虫・成虫へと変態するめずらしい怪獣だ。

幼虫から成虫へ変態する怪獣というのは発明だと思う!

ではこのどちらをゴジラと戦わせるか?

これは案外難題である。

 

モスラの幼虫がゴジラに倒され、親モスラが子を助けに来るのだろうか?

はたまた、親子で力を合わせゴジラに立ち向かうのか?

この映画の脚本は、

そこをあるアイデアで実にうまく解決している♪

子どもの頃、リアルタイムで観た私は、文字通り手に汗を握った!

ハラハラドキドキなのである。

 

 

オープニングは嵐の海。ここは何度観ても圧巻!

撮影所の特製プール。

人工の波を作り特大扇風機で風を当てるというアナログ撮影だが、

波の質感(波頭に風が当たり砕ける様子)が実にリアル。

海の深さ、怖さすら感じるほどだ。

 

この嵐でインファント島の土中で眠っていたモスラのタマゴが流され、

日本に漂着するところから物語は始まる。

 

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で… でかい!

この合成によるアナログ感がたまらないぜ♪

 

 

タマゴは金の亡者である興行師の手に渡り、見世物にされる。

興行師が発見者の網元から買い取ったタマゴの値段が、122万4,560円。

その内訳が、ニワトリのタマゴが卸しで1個8円だから…

モスラのタマゴは、およそ15万3,820個分になるというのだ。

15万3,820個 x 8円 = 122万4,560円?

(網元 だまされてないか?)

 

 

 さて、

モスラのタマゴを取り戻しに来たインファント島の妖精(小美人)を

冷たく追い返してしまう人間のエゴ。

そこへ突如現れるゴジラ

この急展開に違和感がないところが見事!

なぜゴジラが現れたのか? なぜゴジラがそんな所にいたのか?

何の説明もなく、突如土中から現れるゴジラ

人間の欲望がゴジラを目覚めさせたのか?

理屈などどうでも良いのだ。

 

 

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ゴジラと言えばシッポだ!

このシッポがまず最初に現れるという演出が粋なのだ♪

 

 

日本はこのゴジラのために大変な事になる。

そして人間はモスラに助けを求めるのだが…

 

『タマゴは返さない、ゴジラはやっつけてくれ!』

そんな虫のいい頼みが通じる訳もなく、断られる。

しかし、それはタマゴを奪われた事への仕返しではなく、

成虫モスラにはゴジラと戦えない理由があった。

この理由が観客を泣かせるのだ!

 

宝田明扮する新聞記者はあきらめずに力説する。

 

『人間不信のない世の中は理想です。

でも、人間が多ければむずかしい問題が起るのです。

どうか長い目でみてください!』

 

実に正論である。

恥ずかしくなるほどの正論なれど、説得力がある。

これは、この時代がまだ未来に希望が持てたからこそ言えたのだ。

 

それに呼応するようにモスラが鳴き、

小美人はモスラの気持ちを伝えるのだ。

モスラは、力をお貸しします!』

 

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な…なんでや~! タマゴ取られたのに~! なんで人間助けるんや~!

モスラ~ おまえエエやっちゃな~!

 

 

こうして、モスラ対ゴジラの戦いが始まるのだが…

正義の怪獣モスラが、ゴジラと戦えないある理由を背負ったまま、

それでも戦わなければならないというところがミソ。

この2大怪獣の戦いを観ると、実に練られたサービス満点の脚本が、

この物語をスリリングにしている事が良くわかる。

 

 

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ゴジラはこんなにも元気である!

この軽やかな歩き方は、その後のどのゴジラ役者もマネ出来なかった!

 

 

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ゴジラのトレードマークであるシッポが戦う時に弱点となるのだ。

賢いモスラは、ゴジラとの戦い方を熟知していた!

 

 

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しかし、モスラは力尽きてしまう。残された卵を抱きかかえたまま!

 

 

ここまでが映画の前半である。

尺を残したままモスラの成虫が力尽きてしまうという展開!

なんとも非情な脚本ではないか!

 

力尽きた親モスラの体温で卵は孵化するのだが…

生まれたばかりのモスラの幼虫にゴジラと戦う力があるのか?

子どもだった私はこのシーンにクギ付けになった。

幼虫対ゴジラでは戦いにならないじゃないか!

どうするんだモスラ

この映画の真骨頂はここからなのだ。

 

元気なゴジラは調子に乗って近づいてくる。

すると卵にヒビが入り… 生まれるのだ。

奇跡が!

 

子供だった私はスクリーンに向って叫んだ!

行け~! モスラ~!!

 

このシーンは、大人になった今観ても感動する。

力とは何かを熱く、子どもにわかるように語りかけてくる。

どんなに巨大な力も難攻不落に思える障壁も打ち倒すことができる。

モスラは渾身の力を振り絞り

子どもだった私にそのことを教えてくれた。

子ども向けの映画で、こういう奇跡は2度と起こらないだろう。

 

 

戦いを終え、ゴジラの脅威から日本を救ったモスラは、

何の見返りも求めず小美人と共に、インファント島へ帰って行く。

 

モスラへのお礼は、

我々が人間不信のない良い社会を作る事だ!

と語りかけるラストのセリフが、今でも私の胸を熱くする。

 

 

信頼・善意・誠意という3つの言葉が登場人物の口から語られる。

きわめて道徳的なこの作品は、しかし説教臭さなど微塵もなく、

子どもたちにごく自然に受けとめられるように創られている。

今のように社会が複雑化する前のシンプルな時代だからこそ

こういう力強いテーマが通用したのだろうが、

それにしても、実に見事な作品だと思う。

 

ネット上のモスラ対ゴジラの画像を流用・加工させて戴きしました 感謝!

 

 

 

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