電撃フリントGO!GO作戦
OUR MAN FLINT
★★★ 部分的に面白い♪
★
この映画をリアルタイムで観た人は
すでに50代後半か60代後半になっているはずだ。
それぐらい昔の映画である。
007の世界的大ヒットでスパイブームが起こったのは1960年代だ。
そりゃ~もう、世界中で007の模倣作品が量産された。
特にイタリアは商魂たくましかった!
007の11倍楽しめる『077/地獄のカクテル』なんて創ってた!
11倍は無理だが、これがそこそこ面白かったりする♪
日本でも『スパイキャッチャーJ3』『キイハンター』などが創られた。
『スパイキャッチャーJ3』なんて、若い人は知らんだろう。
若き日の川津祐介主演、特撮スパイアクションの佳作であり、
マニア垂涎のTVドラマなのであった!
この話は機会があれば別の日に…
さて、
60年代は正義のスパイが最も忙しかった時代である。
ということは…
世界征服を企む悪の組織も忙しかった♪
秘密情報部員の求人が後を絶たず、
悪の組織が求める才能も引く手あまたであった。
正義と悪のバランスが絶妙で、グレーゾーンという悪人はいなかった。
とてもわかりやすい時代だったのだ。
それがどうだ…
今や現役はジェームズ・ボンドだけとなり、
世界征服の野望を持つ悪人もいなくなった。または諦めた。
寂しい限りである。
正義も悪も、共に大繁忙期だった懐かしの60年代。
彼らにとっては稼ぎ時♪ いい時代であった♪
そんな時代に、007のような面白い作品が創られた。
あくまで『のような作品』で、007ではない!
制作したのはアメリカ人である。
正確には、アメリカ人と伝説になる前の中国人?らしい。
この007のような作品のタイトルは
『電撃フリントGO!GO作戦(原題:OUR MAN FLINT)』という。
原題の『我らがフリント』の方がアメリカらしいが
邦題の『電撃フリント』も悪くはない。
『電撃』というのがいいではないか♪
『GO!GO作戦』は、当時のゴーゴーダンスから採ったのだろう。
当時大流行したミニスカートとミニカーをかけたもので、
アクション映画や戦争映画には『~大作戦』という邦題が多かった。
『電撃フリント』は007のパロディ作品だが、
コメディではなく、れっきとしたアクション映画である。
わりと地味な脇役俳優ジェームズ・コバーンは、
この初主演映画のヒットで人気スターの仲間入りを果たした!
ジェームズ・コバーンは、この映画の魅力のひとつである。
007のパロディと書いたが、
ある意味、上から目線のハリウッド映画かもしれない。
007が大ヒットしたとは言え、所詮はイギリス映画だ。
まだ勢いがあったハリウッドにとっては敵ではなかったろう。
007程度なら楽に創れるという優越感から余裕で創った作品。
見方によってはそう見えなくもない。
なぜなら、007のパロディや亜流というより超越しているからだ。
フリントという主人公が!
★★
フリントはZOWIE(国際連帯秘密諜報機構)の主席から依頼を受け、
難事件に乗り出すスパイ?というか、謎のスーパーマン?というか…
そこらがはっきりしないのだが、空手の達人で頭脳明晰、
美女にもめっぽう強く…つまり、謎の超人なのだ。
ひとツッコミしよう。
国際連帯秘密諜報機構てなんやねん!
世界中で繋がっている秘密のスパイ組織てなぁ…
世界中で繋がっとったら、秘密ちゃうやん!
ボンドのMI6とも繋がっとるんかい?
ともかく、
ネットがなかった時代に、世界中の秘密諜報機関が繋がっていた!
その本部がワシントンにありまんねん。
各国の代表を束ねるのがアメリカ人のクラムデンいうおっさんや。
この時点で、アメリカ正義!と言ってるようなものだ。
イギリス情報部も傘下にあるのだろう、多分。
主人公のデレク・フリントはスパイではない。
ここがユニーク!
では何者なのかというと… わからない。
名前のフリントとは『火打石』または『ライターの石』のこと。
その名の通り、彼はライターを持っている。
しかし、そんじょそこらのライターではない!
実に82種類の秘密兵器が隠されている。
ライター機能を入れると83種類だ!
スマホもアップルウォッチもなかった時代、
ただのライターに82種類の機能が標準で搭載されていた。
Macの原点はここにあった!
フリントは空手だけではない!
ヨガの達人でもあり、仮死状態を維持出来る。
おまえは仙人か!
どう考えてもメチャクチャな設定である。
こういう設定自体、007を見下している。
アタッシュケースに隠しナイフ? ふっ、ヤボだぜ。
アメリカ人はライターだけさ、ライターだけ♪
そういう人を食った映画なのだ。
そのアメリカの余裕をJ・コバーンという俳優が楽しみながら演じている。
J・コバーンの起用が、この映画をかなり独創的な作品に引き上げた。
まずそこがこの映画の魅力の一つなのだ。
★★★
さてストーリーは…
ギャラクシーという謎の組織が
地球の気象をコントロールして理想世界を作ろうと企む。
気象をコントロールするという発想は
イギリス映画『アベンジャーズ(1998年)』に先駆けているが…
正直どうでもいい。大したお話ではないから♪
スペクターのような秘密基地が出てきて、
ボンドガールならぬフリントガールがワンサカ登場する。
つまり、そういうB級映画である。
ただこのフリントには、本家007との決定的な違いがある。
他の亜流映画がスパイを主人公にしたのに比べ、
フリントはスパイではない。
銃の名手でもない。
その手のアクションはほとんどないのだ。
にもかかわらず、
この映画の最大の見せ場はアクションである。
邦題に『電撃』という言葉を使ったのは、
宣伝会社の人がこのアクションに少なからず衝撃を受けた証拠だ。
この映画のもうひとつの魅力。
それは『空手アクション』なのだ!
007やその亜流作品に登場する空手使いは、大抵悪人である。
つまり、主人公を苦しめる敵側の刺客が空手使いなのだ。
『007/ゴールドフィンガー』のオッド・ジョブは有名だが、
他の亜流作品でも、敵対する悪の側が使う武術だった。
そこを逆手に取ったこの映画。
主人公が空手の達人である。
この映画をリアルタイムで観たとき、私は驚いた!
当時のアクション映画のどのスタイルにも当てはまらない。
つまり、フリントスタイルとでも呼ぶべきアクションだった!
多くの映画が007のアクションを模倣した時代に、
全く違うアクションスタイルを持っていたのが『電撃フリント』である。
なぜこのような独創的なアクションを創れたのか?
ここで 伝説の中国人が登場する!
★★★★
『燃えよドラゴン(1973年)』が公開された後、
若き日のブルース・リーが『電撃フリント』のアクション監督をしていた
という記事を何かで読んだ。この記事が何だったかは覚えていない。
ブルース・リーとジェームズ・コバーンは親交があり、
師弟関係だったというのは有名な話だから、信憑性はある。
改めてネットで調べると、映画会社が武術指導にブルース・リーを雇い、
会社の指示でコバーンがリーの道場に入門した という記述がある。
さらに、私の手元にある当時のプログラムには
J・コバーンに空手とヤワラを教えたのは
ブルース・テグナーという有段者である。
という記述が載っている。
このブルース・テグナーという謎の人物が
伝説になる前のブルース・リーなのだろうか?
これが事実なら、当時の観客は、ジェームズ・コバーンを通して、
初期のブルース・リーを観ていたことになる。
ジェームズ・コバーンの奇妙な叫び声(笑うけど♪)
ひじ撃ちで相手を倒す時に見せるあの口をすぼめた表情(笑うけど♪)
そして当時としては珍しかった横蹴り(これはなかなかだ!)
というわけで、
フリントアクションをGIFアニメでまとめてみた(大変だった!)
よ~く眼を凝らしてみてほしい!
一瞬、ブルース・リーが降臨するぞ!
★ これがフリントカンフーだ!★
GIFアニメは、かなり編集している。
実際のアクションは、もう少しスローモーである。
スピーディーな現在のアクションに比べればショボイかも?
『電撃フリント』は、You Tubeで全編鑑賞できる。
このアクションは、冒頭24分辺りにある♪
コバーンのアクションを観返すたびに思うのは、
ブルース・リーのアクションは、他人には出来なかったということ。
ミスター・加藤役でレギュラー出演した
アメリカTVドラマ『グリーン・ホーネット』のアクション以外、
ブルース・リーのアクションはスクリーン上にはなかった。
後に世界中のファンが模倣することになるあのブルース・リーの独特の仕草。
そういう完成されたカンフーアクションの手本がない状態で、
アメリカ人に武術指導をするには無理があったのだ。
『電撃フリント』のこのアクションシーンを観るたびに思うのだ。
カメラのこちら側に、ブルース・リーが立っていたのかと。
当時のハリウッド映画界で
東洋人の武術指導にどこまでの権限が与えられていたのか?
実際には、ブルース・リーは関わっていなかったのかもしれない。
しかし、このアクションはどう観てもアメリカ的ではない。
このアクションが本当に彼のオリジナルだとすれば、
『電撃フリント』は、若き日のブルース・リーがアメリカ映画に残した
ささやかな足跡を観る事ができる貴重な映画と言える。
電撃アクションは、わずか26秒の瞬間芸!
何度見ても、そこだけは色あせず、不思議と面白い!
J・コバーンのぎこちない動きが独特で、
今でも永久保存版として再見に耐えられる26秒アクションである。
それ以外に観るところのない映画だが…
★ BSで放送された『電撃フリント GO!GO!作戦』を加工・編集させていただきました ★
感謝!
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