岩井田治行の『くまのアクセス上手♪』

興味を持った本と映画のレビューとイラストを描く♪

もう一つのブルース・リー映画?

 

電撃フリントGO!GO作戦

OUR MAN FLINT

1966年アメリカ/ダニエル・マン監督作品

★★★ 部分的に面白い

 

 

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この映画をリアルタイムで観た人は

すでに50代後半か60代後半になっているはずだ。

それぐらい昔の映画である。

 

007の世界的大ヒットでスパイブームが起こったのは1960年代だ。

そりゃ~もう、世界中で007の模倣作品が量産された。

特にイタリアは商魂たくましかった!

007の11倍楽しめる『077/地獄のカクテル』なんて創ってた!

11倍は無理だが、これがそこそこ面白かったりする♪

 

日本でも『スパイキャッチャーJ3』『キイハンターなどが創られた。

『スパイキャッチャーJ3なんて、若い人は知らんだろう。

若き日の川津祐介主演、特撮スパイアクションの佳作であり、

マニア垂涎のTVドラマなのであった!

この話は機会があれば別の日に…

 

さて、

60年代は正義のスパイが最も忙しかった時代である。

ということは…

世界征服を企む悪の組織も忙しかった♪

 

秘密情報部員の求人が後を絶たず、

悪の組織が求める才能も引く手あまたであった。

正義と悪のバランスが絶妙で、グレーゾーンという悪人はいなかった。

とてもわかりやすい時代だったのだ。

 

それがどうだ…

今や現役はジェームズ・ボンドだけとなり、

世界征服の野望を持つ悪人もいなくなった。または諦めた。

寂しい限りである。

正義も悪も、共に大繁忙期だった懐かしの60年代。

彼らにとっては稼ぎ時♪ いい時代であった♪

 

そんな時代に、007のような面白い作品が創られた。

あくまで『のような作品』で、007ではない!

制作したのはアメリカ人である。

正確には、アメリカ人と伝説になる前の中国人?らしい。

 

この007のような作品のタイトルは

『電撃フリントGO!GO作戦(原題:OUR MAN FLINT)』という。

原題の『我らがフリント』の方がアメリカらしいが

邦題の『電撃フリント』も悪くはない。

『電撃』というのがいいではないか♪

 

『GO!GO作戦』は、当時のゴーゴーダンスから採ったのだろう。

マイケル・ケイン主演のミニミニ大作戦(1966年)

当時大流行したミニスカートとミニカーをかけたもので、

アクション映画や戦争映画には『~大作戦』という邦題が多かった。

 

『電撃フリント』は007のパロディ作品だが、

コメディではなく、れっきとしたアクション映画である。

アメリカ資本で創られた最初のカンフー映画と言えなくもない♪

 

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わりと地味な脇役俳優ジェームズ・コバーンは、

この初主演映画のヒットで人気スターの仲間入りを果たした!

ジェームズ・コバーンは、この映画の魅力のひとつである。

 

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007のパロディと書いたが、

ある意味、上から目線のハリウッド映画かもしれない。

007が大ヒットしたとは言え、所詮はイギリス映画だ。

まだ勢いがあったハリウッドにとっては敵ではなかったろう。

 

007程度なら楽に創れるという優越感から余裕で創った作品。

見方によってはそう見えなくもない。

なぜなら、007のパロディや亜流というより超越しているからだ。

フリントという主人公が!

 

フリントはZOWIE(国際連帯秘密諜報機構)の主席から依頼を受け、

難事件に乗り出すスパイ?というか、謎のスーパーマン?というか…

そこらがはっきりしないのだが、空手の達人で頭脳明晰、

美女にもめっぽう強く…つまり、謎の超人なのだ。

 

ひとツッコミしよう。

国際連帯秘密諜報機構てなんやねん!

世界中で繋がっている秘密のスパイ組織てなぁ…

世界中で繋がっとったら、秘密ちゃうやん!

ボンドのMI6とも繋がっとるんかい?

 

ともかく、

ネットがなかった時代に、世界中の秘密諜報機関が繋がっていた!

その本部がワシントンにありまんねん。

各国の代表を束ねるのがアメリカ人のクラムデンいうおっさんや。

この時点で、アメリカ正義!と言ってるようなものだ。

イギリス情報部も傘下にあるのだろう、多分。

 

主人公のデレク・フリントはスパイではない。

ここがユニーク!

では何者なのかというと… わからない。

 

名前のフリントとは『火打石』または『ライターの石』のこと。

その名の通り、彼はライターを持っている。

しかし、そんじょそこらのライターではない!

実に82種類の秘密兵器が隠されている。

ライター機能を入れると83種類だ!

 

スマホもアップルウォッチもなかった時代、

ただのライターに82種類の機能が標準で搭載されていた。

Macの原点はここにあった!

 

フリントは空手だけではない!

ヨガの達人でもあり、仮死状態を維持出来る。

おまえは仙人か!

どう考えてもメチャクチャな設定である。

こういう設定自体、007を見下している。

アタッシュケースに隠しナイフ? ふっ、ヤボだぜ。

アメリカ人はライターだけさ、ライターだけ♪

そういう人を食った映画なのだ。

 

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そのアメリカの余裕をJ・コバーンという俳優が楽しみながら演じている。

J・コバーンの起用が、この映画をかなり独創的な作品に引き上げた。

まずそこがこの映画の魅力の一つなのだ。

 

さてストーリーは…

ギャラクシーという謎の組織が

地球の気象をコントロールして理想世界を作ろうと企む。

気象をコントロールするという発想は

イギリス映画アベンジャーズ(1998年)に先駆けているが…

 正直どうでもいい。大したお話ではないから♪

 

スペクターのような秘密基地が出てきて、

ボンドガールならぬフリントガールがワンサカ登場する。

つまり、そういうB級映画である。

 

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ただこのフリントには、本家007との決定的な違いがある。

他の亜流映画がスパイを主人公にしたのに比べ、

フリントはスパイではない。

銃の名手でもない。

その手のアクションはほとんどないのだ。

 

にもかかわらず、

この映画の最大の見せ場はアクションである。

邦題に『電撃』という言葉を使ったのは、

宣伝会社の人がこのアクションに少なからず衝撃を受けた証拠だ。

 

この映画のもうひとつの魅力。

それは『空手アクション』なのだ!

 

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007やその亜流作品に登場する空手使いは、大抵悪人である。

つまり、主人公を苦しめる敵側の刺客が空手使いなのだ。

『007/ゴールドフィンガーのオッド・ジョブは有名だが、

他の亜流作品でも、敵対する悪の側が使う武術だった。

 

そこを逆手に取ったこの映画。

主人公が空手の達人である。

この映画をリアルタイムで観たとき、私は驚いた!

 

当時のアクション映画のどのスタイルにも当てはまらない。

つまり、フリントスタイルとでも呼ぶべきアクションだった!

多くの映画が007のアクションを模倣した時代に、

全く違うアクションスタイルを持っていたのが『電撃フリント』である。

なぜこのような独創的なアクションを創れたのか?

ここで 伝説の中国人が登場する!

 

燃えよドラゴン(1973年)が公開された後、

若き日のブルース・リー『電撃フリント』のアクション監督をしていた

という記事を何かで読んだ。この記事が何だったかは覚えていない。

ブルース・リージェームズ・コバーンは親交があり、

師弟関係だったというのは有名な話だから、信憑性はある。

改めてネットで調べると、映画会社が武術指導にブルース・リーを雇い、

会社の指示でコバーンがリーの道場に入門した という記述がある。

 

さらに、私の手元にある当時のプログラムには

J・コバーンに空手とヤワラを教えたのは

ブルース・テグナーという有段者である。

という記述が載っている。

 

このブルース・テグナーという謎の人物が

伝説になる前のブルース・リーなのだろうか?

これが事実なら、当時の観客は、ジェームズ・コバーンを通して、

初期のブルース・リーを観ていたことになる。

 

ジェームズ・コバーンの奇妙な叫び声(笑うけど♪)

ひじ撃ちで相手を倒す時に見せるあの口をすぼめた表情(笑うけど♪)

そして当時としては珍しかった横蹴り(これはなかなかだ!)

 

というわけで、

フリントアクションをGIFアニメでまとめてみた(大変だった!)

よ~く眼を凝らしてみてほしい!

一瞬、ブルース・リーが降臨するぞ!

 

 

 

 これがフリントカンフーだ!

 

 

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GIFアニメは、かなり編集している。

実際のアクションは、もう少しスローモーである。

スピーディーな現在のアクションに比べればショボイかも?

『電撃フリント』は、You Tubeで全編鑑賞できる。

このアクションは、冒頭24分辺りにある♪

 

コバーンのアクションを観返すたびに思うのは、

ブルース・リーのアクションは、他人には出来なかったということ。

ミスター・加藤役でレギュラー出演した

アメリカTVドラマグリーン・ホーネットのアクション以外、

ブルース・リーのアクションはスクリーン上にはなかった。

 

後に世界中のファンが模倣することになるあのブルース・リーの独特の仕草。

そういう完成されたカンフーアクションの手本がない状態で、

アメリカ人に武術指導をするには無理があったのだ。

 

『電撃フリント』のこのアクションシーンを観るたびに思うのだ。

カメラのこちら側に、ブルース・リーが立っていたのかと。

 

当時のハリウッド映画界で

東洋人の武術指導にどこまでの権限が与えられていたのか?

実際には、ブルース・リーは関わっていなかったのかもしれない。

しかし、このアクションはどう観てもアメリカ的ではない。

 

このアクションが本当に彼のオリジナルだとすれば、

『電撃フリント』は、若き日のブルース・リーアメリカ映画に残した

ささやかな足跡を観る事ができる貴重な映画と言える。

 

電撃アクションは、わずか26秒の瞬間芸

何度見ても、そこだけは色あせず、不思議と面白い!

J・コバーンのぎこちない動きが独特で、

今でも永久保存版として再見に耐えられる26秒アクションである。

それ以外に観るところのない映画だが…

 

 

★ BSで放送された『電撃フリント GO!GO!作戦』を加工・編集させていただきました ★

感謝!

 

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