Predator
1987年 アメリカ/ジョン・マクティアナン監督作品
★★★★☆ 飽きない面白さ♪
★
アナログ世代の私にとって、何がワクワクするかというと…
宇宙から何かが落ちてくるぐらい、ワクワクする事はない♪
この映画は冒頭でいきなり落ちてきます♪ いいですね~♪♪
まるで昭和30年代の少年マンガを観ているようです。
あの頃は、本当にいろんな物が落ちてきました。ありがとう!
シュワちゃんというキャラなしでは、成り立たなかったこの映画。
まさにグッドタイミングのキャスティング♪
出だしは傭兵部隊が活躍する戦争アクションで始まるが…
やがて異星人との死闘という、とんでもない展開になって行く♪
私はこういう荒唐無稽物が大好物なのだった!
大臣を乗せた米軍ヘリがコースをはずれ、どこかに墜落する。
地図が示され、『国境を越えたゲリラ地域』という他はわからない。
どうやら架空の場所らしい。
救出部隊のリーダーであるシュワちゃんは、部下を引き連れ救出へ向かう。
ところが、大臣だと思った男はCIAだった。
救出作戦は上辺だけ。実はCIAの機密文書を奪回する裏の任務が。
シュワちゃんは怒る。俺をハメたなと。
ならば文書さえ手に入ればこんなところに用はない。帰還するぞ!
ところが地元のゲリラが周りから迫って来る。応援を呼ぶが来てくれない。
シュワちゃんは孤立無援のまま逃げ道はジャングルしかないと判断し、
地元女性に道案内をさせ逃避行を決行するが…
映画はここら辺からトーンが変わる。
何者かに監視されている気配がするが、目視できる範囲には何もいない。
気のせいかとジャングルを進んでいくと…
こんな感じで何かがシュワちゃんたちを監視している。木の上から。
サーモグラフィで捉えたこの映像は一体何だ?
木の上には何がいるの?
やがて風景がゆらりと揺れたかと思うと人のような姿に。
なんだこれはと眼を凝らす間もなく、それがいきなり襲って来る。
犠牲になった兵士の遺体からは内蔵がグシャグシャと…
ゲリラや猛獣の仕業ではない。手際が良すぎる恐すぎる。
そしてまた一人仲間が消えて…
全編がアナログタッチで進行する。
おそらくセットはひとつもないのでは?
ロケですよロケ! いいですね~! 泥まみれの汗まみれ♪
全てが本物という現実感が、この空想物語の質感を重厚にしている。
重々しいヘリコプター。重々しい銃器類。重々しい男たち。
そして、本当に重そうなシュワちゃんよりも、さらに重そうな異星人 ♪
この作品は、画面に映る全ての物が『重い』のだ。
ジャングルを縦横無尽に飛び回る謎の物体は、透明スーツを着た異星人。
この透明感が今観てもとってもユニーク♪
CG技術というのは、これぐらいがちょうどいいと思うのだ。
えっ? ゲリラじゃなくて異星人!
マジかよと!
我々を狙っているモノが人間ではないと知ったシュワちゃんは、
自分たちが戦争物ではなく、SFアクションの主人公だと知り、
ここで戦わなければ全滅すると覚悟を決めるのであった。
映画はここから怒濤のあり得ない面白さに突入する!
★★
私はどちらかというと、エイリアンよりプレデター派なのだ。
どちらも着ぐるみだが、プレデターは何しろ大きい。
プロレスラーみたいな人が入っているのもいい。
CGでは難しいだろう重々しい質感表現が実に良い♪
そうなのだ。モンスターは重くなければ有り難みがない!
エイリアンはスリムで軽い感じだが、プレデターは『重い』のだ。
この重いモンスターと重いシュワちゃんたちが戦う重い戦い!
さらに、お互いが戦いのプロというところがミソだ。
プレデターは知能の低い生物ではなく、
何やら武士道の心得を身につけたサムライのように描かれる♪
実に残虐な殺戮者なのだが、強い相手には敬意? を示す。
戦国時代の武将が、戦う前に名乗りを上げた様に、
正々堂々と戦う精神を持っている。実に礼儀正しい。
礼儀を重んじながら殺戮を繰り返す彼らの行為に矛盾はないらしい。
この映画では殺戮者である異星人が人間狩りをする。
何のための狩りなのかは不明だが、そういう設定なのだから受け入れよう。
和訳すると『捕食者』という意味らしいが獲物を食べるシーンはない。
人間を捕えて木に吊るして皮を剥ぎ、内蔵を引きずり出し、
そして、されこうべを戦利品としてコレクションするのである。
エイリアンのように、ひたすら殺戮を繰り返す下等生物ではない。
己の強さを誇示するというプライドを持っている。
そこがとても面白いのである♪
ストーリーの構造は極めてシンプル。
『13日の金曜日』のように、一人また一人とやられていく。
プレデターと戦う極限状況の傭兵たちの描写が面白い。そして怖い!
最後に残ったシュワちゃんとの一騎打ちは、わかっていてもハラハラする♪
プレデターと戦う傭兵たちには、戦う男のプライドがあり、
相手が何者であろうと絶対に逃げずに立ち向かう。
女性も出てくるが活躍はしない。非常に男臭い映画なのである。
単純と言えばそれまでだが、平等に女性も活躍させるという
媚を売った展開がないところがいい。
この汗臭い戦いに女は無用だぜ!
その意味では、男性寄りで偏っているという見方もできるが、
この男臭い戦いだからこそ成功しているのだ。
この汗臭い男の戦いはアナログだから出来る世界だ。
こういう面白さが、CGでは出せない。
『エイリアンVSプレデター』も、その続編もいまひとつ面白くない。
90年頃を境に、徐々に失われて行った空想物語の『映像』としての面白さを
もう一度取り戻してほしいと切に切に願う!
★★★
『プレデター』は公開当時批評家に酷評されたらしい。
何となくわかる気もするが、今ではカリスマ作品となった。
プレデターの透明スーツなどは時代を先取りしていた。
『ブレードランナー』も公開当時は評価されず、後年に高い評価を得た。
こういう作品は時代の先を行くという特徴がある。
肉体美で世に出たシュワちゃんは、演技で勝負する役者ではなく、
スタローンと同じく肉体アクションが売りである。
つまり『色物』の部類だから評価の対象ではないのだろう。
どこの国でも娯楽は芸術の下に位置しないといけない決まりがあり、
別種のジャンルという意識は未だに薄い。
この映画も肉体アクションであることに変わりはなく、
シュワちゃんを起用したのも他に理由はないだろう。
しかし、後に続くこの映画のバリエーションが冴えないのは、
強大なプレデターと対峙する側の人間を演じるカリスマがいないことだ。
SFアクションはその後も創られているが、ほぼCGである。
若き日のシュワちゃんのような存在がないのだ。
プレデターという造形と設定の面白さに匹敵する役者の存在。
それがアーノルド・シュワルツェネッガーという役者であり、
この映画の成功の要因のひとつだと思う。
しかしプレデターに匹敵する俳優は評価の対象外であった。
批評家に酷評されたのは、ある意味正解なのだろう。
非常にマニアックな作品なのだから。
マニアックと言えば、この作品で一番ワクワクするのは……
何と言っても、ラストでプレデターがマスクを脱ぐシーンだ♪
チューブのようなものがついていて、それがプッシュ~! と
音を立ててはずれるあの感覚は、マニアック以外の何物でもない。
あのチューブから出る蒸気みたいなものは、いったい何なのだ?
プッシュ~! というぐらいだから、プレデターの呼吸に必要なもの?
それを外しても、ちゃんと生きて行けるなら、
初めからあのマスクは要らないんじゃないかと突っ込んではいけない!
さらに、マスクから見える光景はブルーなので非常に見づらい。
だから、もっと見やすくするためにマスクを取ったのかと思いきや、
プレデターが裸眼で見ると光景は赤く見えるのだった。ぐっ!
どんだけ見づらい眼なんだとに同情するが、
この細部を気にしない大ざっぱな演出を大らかな心で楽しもう♪
プレデターの素顔は、どうみてもイケメンではない。
これが評論家が評価しなかった最大の原因だろう。
だって、こんなだもの!
これはエグイ! エグすぎる!
口の周りに生えているこの4本の牙。
これが四方に全開するとその中心に口が見えるのだが、
この牙、いったい何の役に立つのか?
これでまず獲物を加え込んでから食すのだろうか?
ただ邪魔なだけじゃないのか?
造形的に面白いだけの意味のない牙! それがいい♪
荒唐無稽というのはこうでなくてはならない。
現実的に考えればおかしいことを大真面目にやるからいいのだ。
こういう生物が隣に住んでいたら困るが、スクリーンの中ならOK!だ。
プレデターが迫ってくる時の重厚な音楽がそのキモさを増幅する♪
こういう娯楽作品を、もっともっともっと創るべきだと思う♪
がんばれハリウッド! CGや3Dは、もうええよ!
★ネット上の『プレデター』の画像を流用・加工させて戴きました 感謝!★